国直集落に伝わる夏の風物詩「アイノコ舟」と「舟漕ぎ競争」

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奄美大島中部に位置する大和村の国直海岸。

水平線に夕日が傾き西の空が茜色に染まる頃、人々は示し合わせた様に海岸へと降りてくる。

海水浴に興じる子供たちや、浜辺のウォーキングに勤しむご婦人方。缶ビール片手に1日の出来事を語らう人々。のんびりと夕日を眺める老人など思い思いのスタイルで集う中、ひときわ目を引くのが舟漕ぎ競争の練習に励む青年たちの姿だ。

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舟漕ぎ競争は奄美各地の夏祭りで行われる伝統のボートレース。

若者たちは大会での優勝を目指して数か月前から練習に明け暮れ、集落民も総出でそれを応援する。

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沖合から聞こえる若者たちの掛け声と水面に伸びる影、海岸から眺める人々の姿は国直海岸の夏の風物詩だろう。

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舟漕ぎ競争に使用される舟は「アイノコ」と呼ばれる奄美大島の伝統舟。全長7メートルほどの木造船に漕ぎ手6名と舵取り1名の7名が乗り込み船を操る。

大正10年に大和村大金久在住の海老原万吉氏(宮崎出身)により考案され、直進性の高い沖縄製の「サバニ」と安定性に優れた奄美大島の「イタツケ」の折衷舟であることから”あいのこ(間の子)”と名付けられた。

船首と船尾にサバニ型の逆三角形の構造を取り入れ、船底をイタツケ型の広く平らな構造にすることで奄美の自然環境と漁法に合致。漁師の間でその性能が評判となりたちまち奄美全域に広まった。

現在は舟大工の坪山豊氏とそのご子息により造船が受け継がれている。

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奄美大島の人々にとって舟漕ぎ競争は八月踊りや他の年中行事同様、厳しい日常から解放され集落民が一体となって楽しむことのできる数少ない娯楽であったに違いない。

しかし、生活様式や住環境は変化し、舟漕ぎや伝統文化への意識も変わりつつある。

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船舶の動力化や漁法の向上によりアイノコの利用頻度は激減し、舟漕ぎ競争以外に使用されることは少なくなった。

人々の暮らしと海の結びつきが弱まりつつあるなか、夏祭りの舟漕ぎ競争はアイノコとその操船術を後世に伝える唯一の場として重要な位置を占める。

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国直の海に夕日が戻ってきたころ、彼らの姿もまた海岸にあった。

高校生を中心としたチームにとって1年間の成長は著しく、体も一回り大きくなったような気がする。昨年(2015年)は惜しくも準優勝だったが、彼らの頑張りは地域の人たちに誇りと勇気を与えてくれた。

伝統を守り、夢を追う若者とそれを見守る人々がいる集落。今年の夏も国直海岸が熱くなるに違いない。

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

島おこしプランナー/NPO法人TAMASU代表。故郷の奄美大島、国直集落を愛するあまり会社を辞めNPO法人を設立。奄美大島の自然や文化を活用した島おこし活動に取り組む。現在は地域住民と共に「国直集落まるごと体験ツアー」を開催し集落民一体となったシマ(集落)づくりを目指す。

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