ネイチャーワンダーアイランド~vol.8| Road to 世界自然遺産 この島と私たちに必要なこと(最終回)

こんにちは、奄美野生生物保護センターの千葉です。

ネイチャーワンダーアイランド~vol.1|なぜ奄美大島には希少野生生物が多く残っている?
ネイチャーワンダーアイランド~vol.2|マングローブってどんなところ?
ネイチャーワンダーアイランド~vol.3|外来種の実態、防除の最前線
ネイチャーワンダーアイランド~vol.4|世界中でここにしかいない! 奄美の多様な鳥たち
ネイチャーワンダーアイランド~vol.5|奄美の自然を楽しもう!
ネイチャーワンダーアイランド~vol.6|アマミノクロウサギを救え! 交通事故に遭ってしまうアマミノクロウサギたち
ネイチャーワンダーアイランド~vol.7|Road to 世界自然遺産 世界遺産とは??

 

前回は世界遺産とは何か、世界遺産に登録されている数や日本の世界自然遺産、さらには世界遺産に登録される条件などについての話をしました。

今回は私たちに課せられた課題、なぜ世界遺産への登録を目指すのか、などについて皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 

世界自然遺産への道のり

それではまず初めに、現在自然遺産への登録を目指している「奄美大島、徳之島、沖縄島北部(やんばる)及び西表島」について、登録に向けたこれまでの経緯と今後のスケジュールについて簡単に説明いたします。

 


2003年
環境省と林野庁が共同で設置した検討会において、当該地域が日本の世界自然遺産候補地の一つとして選定

2013年
世界遺産暫定一覧表(暫定リスト)への掲載が決定

2017年2月
ユネスコ世界遺産センターに世界遺産一覧表記載のための推薦書提出

2018年5月
IUCN(※)から登録の延期勧告

※IUCN(国際自然保護連合):世界遺産の審査・評価を行う機関

2018年6月
推薦の取り下げ

2019年2月
ユネスコ世界遺産センターに推薦書を再度提出

2019年夏~秋頃(予定)
IUCNによる現地調査(その後約半年をかけて評価)

2020年夏頃(予定)
第44回世界遺産委員会において審議(登録可否決定)


 

 

一筋縄ではいかない!指摘と評価

ケナガネズミ(髙橋)

世界遺産への挑戦は既に15年以上にわたりますが、実は昨年5月に国際機関から登録の延期勧告を受け、当初提出していた世界遺産登録のための推薦書を一旦取り下げました。

その延期勧告の主な理由は、保護区域が十分でないこと、外来種対策や増加する観光客に対応した観光管理をさらに進めるべきといった指摘でした。

一方で、自然の価値については、大陸とくっついたり離れたりを繰り返して今の姿になった島々の成り立ちを反映して、既に大陸では絶滅してしまった生き物(遺存固有種)が生き残っていたり、生き物がそれぞれの島で独自の進化をとげて固有種になっていること、また、絶滅危惧種の重要な生育・生息地として非常に重要である、という評価を受けました。

この勧告に対応して、現在は保護区域の拡張や見直し、侵略的外来種の防除事業の実施、ネコ・イヌによる影響の排除・低減、希少種の違法採集や交通事故の防止、適切な観光管理(利用規制)の実施など、関係行政機関や地域住民をはじめとする様々な主体と協働して取組を進めているところです。

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Q4.世界遺産に登録されるとどのようなメリットがあるのでしょうか?

それではクイズを再開します。

このように、登録までの条件が厳しく、様々な課題もある状況ですが、世界遺産登録のメリットについてどう考えるでしょうか。これは、「何のために世界遺産に登録するのか」、とほぼ同じ意味ですが、この答えは簡単ではありません。

アカヒゲ♂(伊藤)小

一般的に、世界遺産に登録されれば、国内的にも国際的にも知名度は向上し、観光地としてのイメージアップや観光振興、農産物等物産のブランド化、交流人口や居住者人口への好影響などが効果として考えられます。

また、自分の住む地域が人類共通の宝として認められることによる誇りや地域を大事にする心の醸成が期待されるほか、遺産登録までのプロセスや登録後の取り組みを通じて自分の住む地域を改めて見つめ直し地域の将来を考えるきっかけとしての効果が考えられます。

ただし、これらは世界遺産になれば必ず得られるわけではなく、従来からの地域の努力があって得られるものと考えられます。

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これまで世界遺産に登録されている国内の他地域においては、観光客の急増による自然破壊やトイレのし尿問題の発生による環境悪化による観光客の減少、外来種の侵入による在来種への悪影響など、デメリットも発生しています。

今年(2019年)2月、再度推薦書を提出し、最短で来年夏頃の世界遺産登録を目指しています。将来にわたって、ここにしかない貴重な自然を守るための責任と覚悟が私たち地域に問われています。

世界遺産に登録することは、私たちがこの場所をしっかりと守っていくということを世界に宣言することにほかなりません。

 

世界遺産というと、とかく観光振興ばかりに注目が集まりがちですが、大事なことは自然を守ることを大前提とし、出発点として、その上で観光振興等を考えていくことだと思います。

私たちは生活をするにあたり、自然と親しみ、大きな恵みを受けながら暮らしていますが、この有り難い自然を奄美に暮らす皆さんの協力を得て、地域全体でずっと守っていく体制を整えていくことが、世界自然遺産登録を目指す大きな目的の一つであるといえます。

 

Q5.この奄美の豊かな自然をずっと守っていくために、私たちにできることは何でしょうか?

最後の問題です。

 

観光客が増えるのはよいことですが、その一方で希少動物のロードキル(vol.6参照)や希少植物の踏み荒しの増加、違法採集の発生など負の影響が生じる可能性があることを認識した上で観光客へ奄美に住む私たちが大事にしている地域の自然と文化をしっかり理解してもらい、過剰な利用を抑え、コントロールすることも必要になります。

アマミノクロウサギ(放獣個体)

地域の振興策を含め、観光利用をどうしていくか、皆で考えていかねばなりません。また、例えば外来種の監視や駆除、ゴミ拾い、ネコなどのペットを適切に飼育することも自然を守ることにつながります。

皆さんも、自然への恩返しとして自分に何ができるかぜひ考えてみてください。実は今日からでもできることがたくさんあります。皆さんのご協力をお願いします!

アマミエビネ(水田)

 

最後に

「ネイチャーワンダーアイランド」vol.1~8まで、連載を読んでいただき誠にありがとうございました。奄美の自然の豊かさ、素晴らしさ、それをよく知り、守っていくこと、そして世界自然遺産への道のり。さまざまな方面からお話をさせていただきました。

 

最後にもう一度お聞きします。世界自然遺産への登録は望ましいことでしょうか?望ましくないことでしょうか?

 

読んでいただいたみなさんご自身に考えていただく機会になったのならば大変うれしく思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

アマミイシカワガエル(髙橋)

 

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

奄美群島の自然や生き物に関する展示を行う環境省の施設。

野生生物の調査、外来種対策、自然観察会を通した普及啓発や世界自然遺産登録に向けた取組などを総合的に行う拠点にもなっている。

開館時間:午前9時30分~午後4時30分

休館日:毎週月曜日(祝日を除く)、年末年始(12月29日~1月3日)

住所:鹿児島県大島郡大和村思勝字腰ノ畑551番地

電話:0997-55-8620

管理協力: 鹿児島県自然保護課、奄美群島12市町村

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