【消えゆく伝統技術に迫るvol2】大島紬泥染めと織りを繋ぐ架け橋~「加工」工程〜

奄美大島 大島紬 amami tsumugi 着物 伝統 

前回に引き続き、今回も奄美大島の消えゆく伝統技術、大島紬のある工程についてご紹介をします。

■【消えゆく伝統技術に迫るvol1】大島紬は2度織られる~「締機(しめばた)」工程に迫る〜

 

大島紬の特徴は、何と言ってもその工程の複雑さにあります。30〜40にも渡る作業工程は、どこかひとつでも途絶えてしまっては大島紬を織ることはできなくなってしまいます。だからこそ他では真似できず、価値が高くなっているものではありますが、問題は後継者が少ないこと

前回の記事では、糸を染める前に行う締機(しめばた)についてお話しました。今回は泥染めをしたあとの加工の工程についてお話します。

職人の高齢化が進み、伝統技術の存続が危ぶまれている中、もう50年も加工の技術に携わってきた有村絹織物株式会社の西勝廣さんにお話を伺いました。

 

泥染めと織りをつなぐ架け橋

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そもそも加工とはどういった作業なのでしょうか

加工とは、織りを行うための糸を加工することです。そのため、「染色」という色を染めこむ作業から、絣(かすり)の締められた糸を解く「目破り」、締めるための綿糸を取り除く「絣全解」、分けた糸を板に巻きつける「板巻」…といった、複数の工程を行います。上の図にあるように、細かく分けるともっと多くの作業工程があります。

大島紬の作業の中で、泥染めや織りは有名な工程です。観光で奄美大島に来られた方は、泥染め体験や機織り体験をしたこともあるのではないでしょうか。

この泥染めと織りの工程をつなぐのが「加工」と呼ばれる工程です。

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泥染めされた糸に、図案を見ながら他の色を染色していき、糸をほどき、織工さんが織りやすいように整えて渡す。この架け橋のような役割こそ、加工なのです

 

作ったものを着けてくれる喜び

西さんに加工の仕事の大変なことを伺ってみました。

大変なことっち、何があるかね…
作ってる時は、良くできればいいな、としか頭にないから。」

 

しばらく考え込み、思い出したように話しはじめました。

「順調にできる柄と、いくら自分が頭の中で描いてもできない柄がある。」

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以前西さんが加工した作品で、特にたくさんの色を使う作品に携わったときのこと。

「これはこの色、って順番に合わせていくんだけど、あと2、3色のときに合わしても絶対色のバランスが合わないことがあるのよ。作っても作っても、合わないって。
そういうときは自分の目の見えるところに置いて、ほったらかす。絶えず見とかんといかんから、見えるところには置いとく。

一ヵ月くらい遊ばせて、途中で思い出して作ってみるけど、まだ合わない。
っちなったら、もう全部捨ててしまう。そしてもう一回、一からやり直して。そうすれば、バランスが合ってくるってことがある。」

 

まさに職人としての感性とプライドにもとづくお話に圧倒されました。

通常、加工をする人が染料を作ることまではしないそうです。親方が色を決め、染料屋が染料を作るという流れ作業ができているからです。

しかし、西さんはご自身で染料を配合し色を作ることもあるのだとか。だからこそ、指示に従うだけではなく自身の感性での色バランスにもこだわる、職人としての姿勢が際立つエピソードです。

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西さんは、大島紬製造のスタートである、図面から係わることもあるそう。どういう雰囲気のお客様がどういうときに着けるのか。イメージして図案師に提案するのだそうです。

加工という工程にとどまらず、大島紬の製造に携わっている西さんですが、どういった瞬間に一番やりがいを感じるか聞いてみました。

「やっぱり、商品ができたときかな。それと、自分が作ったものを人が着けていたら一番嬉しいね

前、他の問屋さんのツアーで奄美に来てる人たちがいて。その中に、ちょうどうちの商品着けていた人がいたのよ。でも、いきなり声かけれないでしょ。
そのツアーの責任者が分かったから、『ちょっと話したいんだけど』と言って話しかけた。『この商品、自分が作った商品なんですよ』と声かけたら、その人すごく喜んでいた。

 

今まで数多くの作品に携わったであろう西さん。一目見ただけで自分の作品なのだと本当にわかるのだろうか?と無粋な疑問を投げかけると、「自分が作ったものは覚えとる。」とぴしゃり。

精魂をきちんと込めているからこそ、その一つひとつは「商品」というよりも西さんの「作品」になっているのだろう、と感じました。

 

常に先を読みながら、丁寧に

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加工は図面を見ながら糸に染色をしていく作業です。どういう人がこの作業に向いているのでしょうか

先を読める人。ただこの点だけを作業すればいいのではなくて、これをしたらどうなるか。先のことを読めていければ仕事が早くなるし、覚えも早くなる。先を読めるかどうかが大事。ただこれだけすればいいと思っていたらいつまでも上手くならん。先を読みながら取り組めば、2年でも十分基礎の力はつけることができる。」

西さんは常に図面を見ながら、自分の今の作業がどこに繋がっているのかを意識しているそうです。そしてできた紬をどんな人が、どんなときに着けているのか考えながら。点だけを見るのではなく、全体を見ながら点を見ることが大事です。

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「あとは細かい作業が好きな人がいい。図面と違うところに染料が垂れたら、漂白剤で修正することもあるが、染料によってはできなくなる。他の色のところに落ちたら大変よ。絶えず気をつけないといけない。」

多くの工程を経て加工までたどり着いた糸です。もちろん予備の糸を用意してリスクには備えていますが、ひとつのミスがそれまでの人の努力を無駄にしてしまうこともあります。当然、作業をする目は真剣になります。

 

大島紬は駅伝のたすき

大島紬は、まるで駅伝のようにタスキを渡して完成されます。どこかひとつでも工程が途絶えてしまうとゴールにはたどり着けません。加工は、それまで多くの工程でつないできたタスキを最後に渡す大事な工程です。

プレッシャーもあり、神経を使う作業ではありますが、自分が携わった紬を着ている人を見たときの喜びはひとしおです。

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泥染めや織りに比べると、確かに花形とは言えないかもしれません。しかし、織工がきちんと織りに集中できるのは、加工の丁寧な仕事があってのこと。もし興味があれば、作業場を見学に来てみてください。

現在、奄美市と龍郷町では大島紬の技術を学ぶ後継者の育成に取り組んでおり、紬事業者が後継者を正規に雇用する体制が整いつつあります。生産数が減り、なかなか集中して技術を学ぶことが難しかった大島紬ですが、この制度を利用すれば2年間向き合って技術を学ぶことができます。

また、2020年の2月には移住体験ツアーも予定しています。詳しくはこちら。

※【ご報告】満員御礼!移住体験ツアーは現在キャンセル待ち受付中です。

 

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

映像エディター/予備校スタッフ 兵庫県出身。奄美群島の文化に魅かれ、2017年1 月に奄美大島に移住。島暮らしや島の文化を伝えるために自身のメディア、離島ぐらし(http://rito-life.com/)を運営する。

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