伸びやかな歌声と瑞々しい感性!女子高生唄者「楠田莉子」さん

島唄

2016/05/30

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麓 卑弥呼

大島紬を着て唄う楠田莉子さん

きれいな声が高く、伸びていく。と思えば、低く哀愁の情感を含む旋律にはっとさせられ、思わず聞き惚れてしまう。若手唄者のなかで、いまもっとも注目を集める楠田莉子さん。唄者としての評価はもちろんだが、彼女にはもう一つ夢がある。その夢に向かって、着実に歩みだしている彼女に、思いを聞いた。

 

唄好き一家に生まれ、物心ついたときから歌っていた

 

奄美市笠利町に生まれ、6歳で同郷の唄者・森山ユリ子さんの教室に通い始めた。

家族はみな島唄や楽器に長けた音楽一家。音楽はいつも自然にそばにあり、島唄はぐんぐんと莉子さんのなかに染み込んでいった。

その才能は着実に開花。2010年に「少年少女民謡民舞全国大会」小学生の部優勝、2012年には同大会中学生の部で優勝。名唄者が居並ぶ「奄美民謡大賞」でも少年の部、青年の部でそれぞれ最優秀賞を獲得している。

奄美の女子高生唄者、楠田莉子

しかし、普段は笑顔がかわいらしい、島の女子高生。

日頃からイベントや宴席に呼ばれて、島唄を披露する機会も多い。学校に通い勉強と両立しながらの忙しい日々をこなしているのだ。

「(イベントが重なると)時折疲れることもありますが(笑)、でも歌うことが楽しいので。大丈夫です」と笑顔。

謙虚で礼儀正しい性格は、先輩や先人を敬い、島唄が持つ大切な心の部分をしっかりと受け止めることに資している。だからこそ、彼女の歌は純粋で伸びやかで、聴いているこちらの耳に心地よく届くのかもしれない。

 

「歌手になりたい」 まっすぐ、楽しく夢を追いかける

ギターを弾く楠田莉子

島唄での活躍の一方、いま莉子さんが追いかけている夢がある。それはシンガーソングライターになること。バンドを組み、ポップスのカバー曲を歌うほか、作詞作曲を手がけるオリジナル曲の制作もスタート。日常で沸き起こる喜びや悲しさなどを、素直な感性で曲にした。

三味線を持つ手をギターに替え、2015年に「ヤマハミュージックレボリューション奄美大会」に出場し、見事優勝。九州ファイナルに出場し、準グランプリを獲得した。

楠田莉子さんのファーストアルバム

そんなオリジナル曲が詰まった、ファーストアルバムも2015年12月に初制作。オリジナル曲5曲と島唄2曲を収録した。島唄で鍛えた伸びやかな歌声はここに健在だ。

 

人との出会い、出会ったあとのつながりの大切さ、感謝の気持ち歌い継ぐ

奄美の女子高生唄者、楠田莉子

活動のフィールドを広げ、自らの可能性をどんどん広げていっている莉子さん。卒業後は「島を離れ、歌手を目指してがんばりたい」ときっぱり。

あえて、島唄の好きなところを聞いてみた。

「歌詞が好き。深いですよね。人との出会いや、出会ったあとのつながり、感謝の気持ち。そんなことが大切に歌い継がれてきている。それが残っているから、島にはあったかい人たちが多いのかな」。

たとえ島を離れ、島唄を歌う機会が減ったとしても、島唄で培った”大切なもの”はしっかりと彼女のなかに残り、消えないのだと感じた。

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この記事を書いたフォトライター

麓 卑弥呼

麓 卑弥呼

ライター/しーまブログ編集長。東京都出身。大学時代に訪れた与論島にはじまり、縁あって奄美大島の新聞社に新卒で就職。さらに縁あって島人と結婚し、自らが島人となり奄美に完全に根を下ろす。フリーライターなどを経て2014年にしーまブログに入社し、現在に至る。

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