ワキャシマヌウタ(ふるさとの唄)を唄う「大棚集落八月踊り保存会」

島唄

2016/06/11

ペン

中村 修

奄美の八月踊り

アラセツ、シバサシ、十五夜と続く旧暦の八月は奄美大島に暮らす人々にとって歳時を区切る神聖な月だ。

稲の収穫を終え、労働から解放された喜びと、豊作への感謝、集落の安泰を祈り、夜を徹して八月踊りを踊る。

奄美大島で旧暦八月を中心に踊られる伝統芸能、八月踊り

八月踊りは奄美大島で旧暦八月を中心に踊られる伝統芸能。男女に分かれて輪になり、チジン(太鼓)を打ち鳴らし唄い踊る。唄は男女交互に唄うが、ウチダシと呼ばれるリーダー役が数百、数千ある歌詞の中から唄を選び唄い始めると他の者がこれに続く。ウチダシは人生訓から恋歌など多彩な歌詞の中から対句や相手の歌詞を引用し掛け合う。

盛り上がってくると次第に荒しゃげ(テンポアップし)相手方が唄い終わらないうちに被せて唄い始める。手足の動きが追いつかないほど早くなり、踊り手が詰まったところで曲はフィナーレを迎える。

奄美大島で旧暦八月を中心に踊られる伝統芸能、八月踊り

また、同じ曲であっても集落ごとに歌詞やテンポが異なり、「ひと山越えると別唄」と言われる程に多様化している。わずか11集落の大和村だが、東部はテンポ良く荒しゃげるカサン唄(奄美北部の唄)に近く、西部はゆっくりとしたリズムで抑揚のあるヒギャ唄(奄美南部の唄)に近い。

この集落ごとの独自性、多様性こそが八月踊りの醍醐味であると同時に、八月踊りの伝承を危うくしている大きな要因でもある。近年は唄い手の高齢化や踊る機会の減少により、各集落で八月踊りの保存・伝承に苦労していると聞く。

そんな中、積極的な活動が功奏しているのが大棚集落だろう。

奄美の八月踊りは老若男女が楽しむ

大棚集落では早々に八月踊り保存会を結成し、豊年祭を始め、アラセツ、シバサシ、奄美まつり、郷友会の八月踊りなど機会を得ては練習の成果を発揮している。定期的に勉強会を開催しており、若い世代の参加者も多い。

昨年の豊年祭も百名を越える老若男女が土俵を二重三重に囲み、伝承活動の着実な成果を感じた。

奄美の八月踊り、土俵を囲み踊る

近年、若者たちの中には生まれ育った地域の伝統文化に誇りを持ち、シマウタを伝承していこうという気運が高まりつつある。彼らが学ぶのはヨソジマヌウタ(他の集落の唄)ではなく祖先から受け継いだ唯一のワキャシマヌウタ(ふるさとの唄)だ。

集落に伝わる唄を集落の人々と共に唄う八月踊りこそ地域の連帯感を深める絆だろう。まだまだ練習途上の大棚集落の若者たちだが、その唄声は力強くいつまでも集落の夜空に響き渡っていた。

 

ペンアイコン
この記事を書いたフォトライター

中村 修

中村 修

島おこしプランナー/NPO法人TAMASU代表。故郷の奄美大島、国直集落を愛するあまり会社を辞めNPO法人を設立。奄美大島の自然や文化を活用した島おこし活動に取り組む。現在は地域住民と共に「国直集落まるごと体験ツアー」を開催し集落民一体となったシマ(集落)づくりを目指す。

Related Articles 関連記事