女装して、顔を隠して、歌い踊る! 大和村湯湾釜の奇祭「ムチモレ踊り」

女性物の浴衣を着た男性が、何人も道を横切っていく。

チヂン(太鼓)の音と、幾人もの歌声が響く-。

夜、集落の一角で繰り広げられる、女装集団の歌と踊り。なにも知らずに、もしその場所を通りがかったら、夢でも見たのかと目をこするかもしれません。まるで現実ではないかのような、一年に一回だけの不思議なお祭りをご紹介します。

祭りの舞台【湯湾釜集落】(ゆわんがましゅうらく)

奄美大島の西海岸にある大和村。奄美市名瀬方面から大和村に入って2つ目の湯湾釜(ゆわんがま)集落は、県道沿いに防風林が立ち並んでおり、内側には真心込めて作られた畑が連なっています。

湯湾釜の無人販売所。いつも新鮮な野菜や果物が、格安で買えます。湾釜の無人販売所。いつも新鮮な野菜や果物が、格安で買えます。

 

400年続く祭り「ムチモレ踊り」って、どんな行事?

さて、大和村の中でもここ湯湾釜集落でしか行なわれていない行事が、冒頭にご紹介した「ムチモレ踊り」です。

毎年、旧暦の10月16日に種下ろし(翌年の豊作を祈願する)行事として行われており、2016年は11月15日(火)に開催されました。

聞くところによると、400年前から行なわれているらしく男女問わず誰でも踊りに参加することが可能。

しかし、衣装は大事。風呂敷などの薄い布で顔を隠し、男性は女性物の浴衣を着ます。そして集落の一軒一軒をもれなくまわり、庭で歌い踊って、カシャ餅(ヨモギもちをサネンの葉で包んだ、奄美の伝統的な菓子)をもらっていきます。

可愛い浴衣の後ろ姿ですが、実は体格の良い男性です。
可愛い浴衣の後ろ姿ですが、実は体格の良い男性です。

ムチモレ踊りに参加してみた!

百聞は一見にしかず。いや、見るだけではなく、理解するには参加が一番。
ということで、ムチモレ当日の夜7時、祭りの会場となる公民館へ。

浴衣をまとい、頭にはまるで中東の男性のような頭巾を身につけた踊り子たちと、三味線とチヂン(太鼓)の楽団と、歌を歌う年配者がそろっています。

三味線とチヂン(太鼓)、そして男女掛け合いの歌で盛り上がります。
三味線とチヂン(太鼓)、そして男女掛け合いの歌で盛り上がります。

一同は、太鼓に合わせてゆっくりした「道唄=おぼこり歌」という歌をうたい、1軒目のトネヤ(祭場)へ向かいます。トネヤに着くと、歌がアップテンポの「ムチモレ歌」に変わり、庭に踊り子たちが入り込み、顔を隠し踊り始めました。

ムチモレ歌の歌詞は30番まであります。
ムチモレ歌の歌詞は30番まであります。

♪ムチモレ歌1番の意味
お休みのところすみません。
家に入れてください、遊びましょう。
はらどんどんじゃ さまえとさんせー (※お囃子)

♪ムチモレ歌30番の意味
おばあさんのくれたカシャ餅は、葉の香りが良く、おいしいね。
来年の稲は田んぼの畦道を枕にするほど豊作だ。
はらどんどんじゃ さまえとさんせー (※お囃子)

庭先にたくさんの踊り子。踊り終わると家主が用意してくれたお菓子やお酒などをいただきます。
庭先にたくさんの踊り子。踊り終わると家主が用意してくれたお菓子やお酒などをいただきます。

踊りは六調のように手を上げてユラユラと踊ります。区長が「餅もろた、餅もろた」と家主から献上された物を紹介すると、踊り子たちは「よいやー!よいやー!」と囃し、踊りはさらにヒートアップ!

踊りが済むと、家主からお酒やお茶、お菓子などをいただき、次の家に移っていきます。子どもたちはたくさんお菓子をもらい、リュックに詰めていました。

実際、顔に薄布をかけてみた時の視界。なんだか非現実的な世界でした。
実際、顔に薄布をかけてみた時の視界。なんだか非現実的な世界でした。

今年回った家は全48軒。19時から始まり、公民館に戻ったのは23時半を過ぎていました。伝統行事と言っても、飲んで、歌って、踊る。まさにパーティーナイトという言葉がぴったりのイベントでした。

家の庭が、ダンスパーティー会場になったように見えます。
家の庭が、ダンスパーティー会場になったように見えます。

 

ムチモレ踊りの由来

かつて湯湾釜は水の便が悪く、集落で大火事があった際に、田んぼの泥で消火したと伝わっており、ムチモレ踊りは、水源の大切さを後世に伝えるために始まった踊りと言われています。

したがって今でも当日の午前中には、集落民で作った旧水道の清掃を行っているそうです。

また、踊り子が顔を隠すのは、神様への尊厳とともに、火災の火傷を隠すためという説もあるそうです。

踊り終わって、公民館で打ち上げ。お疲れ様でした。
踊り終わって、公民館で打ち上げ。お疲れ様でした。

昔の教訓を伝え、今も盛んな農業の繁栄を祈り、子どもからお年寄りまで楽しめるこの行事は、きっといつまでも続いていくにちがいありません。

 

大和村湯湾釜の奇祭「ムチモレ踊り」

大和村湯湾釜

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

新潟県十日町市生まれ。地方紙記者、農業、バックパッカーなどを経て、旅行雑誌や旅ガイドシリーズの編集に携わる。同時に、野外フェスの企画運営や、NPO法人で海外教育支援、震災復興支援を行う。2016年4月から奄美大島に移住。大和村地域おこし協力隊に就任。

関連記事SCENERY 島景

Copyright © 2016 一般社団法人あまみ大島観光物産連盟 All Rights Reserved.