あなたも「ブラ奄美!」Vol.4|固有種の宝庫である奄美の森を探る

島コト

2018/03/24

ペン

勝 朝子

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街歩きの達人であるタレントのタモリさんが、ブラブラ歩きながら土地の歴史や文化、人の暮らしを探るNHKの人気番組「ブラタモリ」。その「ブラタモリ」が2017年に奄美大島にやってきました。

2017年3月~4月に番組異例の3回に渡って放送された「ブラタモリ」では、地元シマッチュ(島人)も知らなかったような、奄美大島の根幹とも言えるディープな文化・歴史・自然が紹介され、多くの発見がありました。番組のナビゲーションを参考に、あまみっけ。ライターが奄美大島の地を巡り、奄美大島の自然とそれによってはぐくまれた奄美の宝について改めてご紹介していきます。

テーマごとに巡る全6回シリーズ。さあ、あなたも「ブラ奄美」してみませんか?

 

あなたも「ブラ奄美!」Vol.1|自然をいかした奄美の宝「大島紬」
あなたも「ブラ奄美!」Vol.2|奄美の米作りに隠された知恵を探る
あなたも「ブラ奄美!」Vol.3|甘い「黒砂糖」のしょっぱい歴史
あなたも「ブラ奄美!」Vol.4|固有種の宝庫である奄美の森を探る
あなたも「ブラ奄美!」Vol.5|海と陸のキワにある生命のゆりかご
あなたも「ブラ奄美!」Vol.6|独特な地形が生み出す自然の恵み

 

あなたも「ブラ奄美!」Vol.4|固有種の宝庫である奄美の森を探る

今回のテーマは、奄美の森です。2017年に国内34カ所目の国立公園として指定された奄美群島と周辺海域ですが、その構成要素の重要な部分に森があります。
みなさんは、奄美と聞くと美しい海のリゾートというイメージをもたれるかもしれませんが、じつは、森もすごいのです。

今回は、ブラタモリの中で紹介された龍郷町の「奄美自然観察の森」と「ビッグⅡ」、そして奄美の森の守り神として紹介されたハブ(蛇)の生態を楽しく紹介する「原ハブ屋」を訪問します。なぜ奄美が固有種の宝庫なのか?という謎を解き明かしていきましょう。

 

「奄美自然観察の森」で奄美の固有種に出会う

まずは、番組内でタモリさん御一行が訪問した島の北部にある「奄美自然観察の森」に向かいます。名瀬から車を走らせること約30分で到着です。

奄美大島龍郷町にある自然観察の森のガイド川畑さん

番組の中でタモリさんを案内されていた龍郷町役場企画観光課 自然観察指導員の川畑 力(かわばた りき)さんです。

「番組の後の反響はいかがでしたか?」と聞いてみたところ「番組を見て来たという方も多いです。『テレビ見ましたよー』と声をかけられると、少し照れますね。」とおっしゃっていました。関西方面の方によく「テレビに出てましたよね?」と声をかけられるそうです。

奄美龍郷町にある自然観察の森のガイド川畑さん

奄美自然観察の森の来訪者は、植物ファンや、バードウォッチャーが多いとのこと。固有種の多さと、観察のしやすさがファンの間では好評で、自然愛好家の方々には人気のスポットになっているそうです。今ちょうど部分改修を行なっているとのことで、より自然を観察しやすい環境が整備されるそうです。楽しみですね。

事前に申し込むと、なんと!100円で園内ガイドをしていただけるということで、今回はガイドをお願いしました。

龍郷町にある自然観察の森が紹介したオオバカンアオイ

管理事務所を出るとすぐ目の前に、番組の中で100年に1m先にしか仲間を増やせない植物として紹介されたオオバカンアオイが生えています。わたしが取材した当日、ちょうど花を咲かせていました。この地面に近いところの黒っぽいものが花です。

オオバカンアオイは、花粉をアリなどに運んでもらうので高いところに派手な色の花を咲かせる必要が無いのだそうです。それにしても地味ですね。これは教えていただかないと気づきません。

こうした植物が残っているのも、奄美の自然が豊かな証拠なのだそうです。

奄美大島の自然に生息しているルリカケス

私たちが歩いていると、奄美の固有種ルリカケスが枝にとまっていました。やはり美しい色!!瑠璃色の羽根とお腹のエンジ色がきれいです。この美しさと裏腹に、ルリカケスはカラスの仲間ということで、普段の鳴き声はギャーギャーと普通のカラスです。それも意外ですよね。

奄美自然観察の森には、このほかにも尺八のような声のズアカアオバトや、美しい音色のアカヒゲなど多くの貴重な鳥がいます。取材当日もズアカアオバトの声が森に響いていました。

奄美龍郷町にある自然観察の森ガイドの川畑さん

番組の中でタモリさんと対決していた鳥の鳴きまねもやっていただきました。私の家の裏でもよく鳴いているリュウキュウコノハズクの声は、そっくりです。「簡単ですよ。」と川畑さんはおっしゃるので私もやってみましたが、難しいです。

みなさんも川畑さんに教わってやってみてくださいね。

奄美大島の固有種となるアマミテンナンショウ

歩きながら、紹介していただいたのが奄美の固有種アマミテンナンショウ。この草には、オスとメスがあり、見分け方は花の開く位置によってわかるそうです。葉より高いところにできるのがオス、低いところにできるのがメスということで、写真の個体はオスと言うことでした。
近くにメスの個体もあり、比較して説明してくださいました。

奄美大島の自然にあるセンリュウとマンリョウ

少し開けた場所に出ると、センリョウとマンリョウが生えていました。この2つの違いの解説もナルホド!!が沢山あったのですが、そこは実際にガイドを御願いして聞いてみてください。(ヒント:木と草)

奄美龍郷町にある自然観察の森の展望台

しばらく歩くと、二つある展望台のうちの一つに到着。下の方に本龍郷の集落、そして対岸には芦徳集落のある半島、その向こうに打田原集落のある半島、奄美パークのあたりを望み、一番遠くにはうっすらと喜界島が見えます。この日はちょっと靄がかかっていましたが、それでもやはり美しい景色です。

番組の中では、喜界島は奄美大島と異なりサンゴ礁が隆起してできた「隆起サンゴ礁段丘」と紹介されていました。
固有種が多い理由の一つが、奄美はユーラシア大陸の端が残ってできた島であり、大陸の動植物と同じであったものが、島に切り離され、大陸側では氷河期で死滅した種が島にはまだ残っているとのことでした。

長い長い地球の歴史の中で島に残されてきた種。それが固有種というわけです。

 

◆ 奄美自然観察の森
鹿児島県大島郡龍郷町円1193

tel.0997-54-1329
https://www.town.tatsugo.lg.jp/kankou_bunka/sizen_siseki_meisyo/amasizenkansatsu.html

 

 

「ビッグⅡ」でハブ獲り棒を握ってみる

ここで、川畑さんにはお礼を言ってお別れし、さらに謎を探るために、龍郷町にあるホームセンターの「ビッグⅡ」へ。
奄美龍郷町にある大型のホームセンターとなるビッグツー

生活雑貨から工具、レジャー用品、ガーデニングまでなんでもそろうホームセンター「ビッグⅡ」です。早速、番組の中でも紹介されていたハブ獲り棒と、収納するハブ箱を見てみましょう。

番組内でも練習していましたが、ハブの捕まえ方は、ハブ獲り棒でハブの頭をおさえて捕まえ、棒で箱のふたを閉めます。決して手で閉めてはいけません。その時にパクッとハブに噛まれてしまうからです。

ハブの毒は神経毒とともに、出血毒というタンパク質を溶かし血管組織を破壊するという猛毒です。すぐに吸い出さないと、肉が壊死してしまうため、島の病院や救急車などには吸引器が準備されています。

島では、ハブは出会ったら必ず捕まえるか、叩いて殺すように教えられます。でないと、また出て次の人が咬まれるからです。今までひどい目にあった教訓として、ずっと受け継がれていることなのですね。

ハブ獲り棒は、木でできた長い棒に先がかぎ型になった長い金属棒がついています。そのかぎ型の部分にハブの首を引っかけて金属を引き、ハブが動かないように固定します。私もハブ獲り棒とホース練習してみましたが、これで失敗したらと思うと…。

もし私がハブに出会ったら…。周りの人に通報して逃げるしかできません。

 

◆ ビッグⅡ
鹿児島県大島郡龍郷町中勝奥間前580

tel.0997-55-4100
https://www.big2.co.jp/

 

 

原ハブ屋の「ハブと愛まショー」でハブについて勉強

もっと、ハブのことを知りたいという方は、ブラタモリの中では紹介がありませんでしたが、原ハブ屋へ足を延ばしましょう。

ビッグⅡから北へ20分、県道82号線沿いの景色の美しい海岸の前に原ハブ屋はあります(奄美市笠利町)。

奄美笠利町にあるハブのお店原ハブ屋

店内は、さまざまな蛇の展示や、ハブにまつわるお洒落なアイテムが販売されています。奄美にお越しの際、是非見ていただきたいのが「ハブと愛まショー」。ハブの怖さだけではなく、ハブの生態や、ハブがいかにして島の自然を守る役割を果たしてきたのかがわかり、とても勉強になります。

ハブが猛毒を持つ蛇であったために、島の人はみだりに山に入ることができず、乱開発が防がれたと言われています。そんなハブの生態が面白く、時に真面目にわかります。

奄美に固有種が多い二つ目の理由が、ハブを頂点とした生態系です。人間による乱開発の手が入らないことで多くの種が死滅することなく残ってきました。

 

◆ 原ハブ屋
鹿児島県奄美市笠利町平字土浜1295-1

Tel. 0997-63-1826
https://harahabuya.com/

 

 

奄美大島壮大な自然の中で生きる動植物たち

奄美では、今までご紹介してきたような奄美固有の生き物もたくさんいますが、それ以外にもリュウキュウアサギマダラの集団越冬(上写真)が見られたり、鳥の渡りが見られたり、と季節によって観察できるものが盛りだくさんです。

 

さて、今回の奄美の森をテーマにした旅はいかがだったでしょうか?

固有種が多い謎は解けたでしょうか?

 

人間の開発の手が入ることなく守られてきた奄美の森は、魅力がいっぱいです。新鮮な空気を吸って、悠久の自然を楽しみに森へ行きましょう。

その際には、奄美群島認定エコツアーガイドの方と一緒に行くと、自分たちだけでは気づかない動植物を見つけたり、生態について知ることができます。それに、何より「安全」です。是非、ガイドツアーにご参加ください。

 

【今回の旅の行程】
名瀬
↓ 車で40分
奄美自然観察の森 (龍郷町)  1時間
↓ 車で30分
ビッグⅡ (龍郷町) 30分
↓ 車で 15分
原ハブ屋 (笠利町) ショー 30分+見学
↓ 車で40分
名瀬

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この記事を書いたフォトライター

勝 朝子

勝 朝子

Webクリエイター、ITサポーター、奄美大島紬のポケットチーフ「フィックスポン奄美」代表。東京出身。縁あって奄美大島出身の夫と結婚。以来毎年奄美大島を訪れ、2012年奄美大島に移住。奄美の自然、人、文化、食べ物が大好きで、島の隅々まで日々探検中!

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