あなたも「ブラ奄美!」Vol.5|海と陸のキワにある生命のゆりかご

ブラタモリで紹介された奄美大島の黒潮マングローブ

街歩きの達人であるタレントのタモリさんが、ブラブラ歩きながら土地の歴史や文化、人の暮らしを探るNHKの人気番組「ブラタモリ」。その「ブラタモリ」が2017年に奄美大島にやってきました。

2017年3月~4月に番組異例の3回に渡って放送された「ブラタモリ」では、地元シマッチュ(島人)も知らなかったような、奄美大島の根幹とも言えるディープな文化・歴史・自然が紹介され、多くの発見がありました。番組のナビゲーションを参考に、あまみっけ。ライターが奄美大島の地を巡り、奄美大島の自然とそれによってはぐくまれた奄美の宝について改めてご紹介していきます。

テーマごとに巡る全6回シリーズ。さあ、あなたも「ブラ奄美」してみませんか?

 

あなたも「ブラ奄美!」Vol.1|自然をいかした奄美の宝「大島紬」
あなたも「ブラ奄美!」Vol.2|奄美の米作りに隠された知恵を探る
あなたも「ブラ奄美!」Vol.3|甘い「黒砂糖」のしょっぱい歴史
あなたも「ブラ奄美!」Vol.4|固有種の宝庫である奄美の森を探る
あなたも「ブラ奄美!」Vol.5|海と陸のキワにある生命のゆりかご
あなたも「ブラ奄美!」Vol.6|独特な地形が生み出す自然の恵み

 

あなたも「ブラ奄美!」Vol.5|海と陸のキワにある生命のゆりかご

今回は、海と陸のキワにある生命のゆりかご、マングローブの謎を探ります。

番組中の解説で琉球大学の尾方隆幸(おがた たかゆき)准教授によると、1,000万年前、奄美と沖縄は台湾ともつながったユーラシアプレートという大陸のキワだったのだそうです。そこから太平洋側にある琉球海溝に引っ張られ、大陸から引き離され、約200万年前に今の奄美と沖縄が島として独立。大陸のキワであった奄美のさらにキワの太平洋岸で今回はブラ奄美です。

 

「黒潮の森マングローブパーク」でマングローブならではの生き物を観察

まずは、今回の話の舞台となる奄美市住用町にある「黒潮の森マングローブパーク」に向かいます。
名瀬から車を走らせること約30分で到着です。

奄美大島黒潮の森マングローブパークの案内人の寿さん

番組の中でタモリさんが訪れた「黒潮の森マングローブパーク」。
エコツアーガイドの寿 浩義(ことぶき ひろよし)さんにご案内いただきました。

今回訪れる海と陸のキワにある森は、マングローブと呼ばれています。
マングローブを近くで見るためにはカヌーで行くことになるので、まずカヌーの操り方の説明から。

奄美にあるマングローブパークでカヌーの指導をするスタッフ

全員、ライフジャケットをつけて集合。
ガイドの方から、前進、バック、右へ行きたいとき、左へ行きたいときのパドルの使い方を教えていただきます。
そして、いよいよ乗船。一般的なものよりも安定の良いカヌーを用意しています。安心ですね。
奄美大島マングローブ内をカヌーで楽しむお客さんたち
小さなお子様も親子で二人乗りに乗れば大丈夫なので、老若男女問わずどなたでも体験できます。
取材の当日も、お子様と一緒に乗った家族連れの方々がいらっしゃいました。

 

奄美大島マングローブパーク内にある壮大な自然

マングローブは木の名前だと思う人が多いのですが、淡水と海水が混ざりあう汽水域に生えている植物の総称です。

奄美のマングローブは西表島に次ぐ国内二番目の面積。広大です。
この平らな森のように見えるものがマングローブです。

奄美大島マングローブパーク内にある壮大な自然

上の写真に見えるのは、マングローブで生きる植物のひとつメヒルギ。葉っぱの先が丸いのが特徴です。

細長いさやえんどうのような散布体という種子は、プチッと枝から落ちて下の地面に落ちてささったり、水に浮かんで流されたりして、広がっていったのだそうです。

根っこは板状の根っこ、板根(ばんこん)になっていて、潮の干満が激しい場所でも呼吸ができるように進化しています。自然のメカニズムはスゴイですね。

奄美大島マングローブパーク内にある壮大な自然

こちらのオヒルギのほうは、葉っぱの先がとがっています。オヒルギの根っこは膝根(しっこん)といって、膝から上が出たような形。これも呼吸のためだとか。自然は不思議です。

メヒルギが雌、オヒルギが雄の木なのかと思ったら、全然別の種類の木なのだそうです。
遠目では似たように見えますが、よく見ると枝の付き方などが全然違います。

奄美大島マングローブにあるオヒルギの葉の観察

番組の中でタモリさんが試していたように、オヒルギの緑色の葉っぱと黄色い葉っぱのかじり比べをしてみましょう。
黄色い葉っぱに吸い込んだ塩分を集中させて、それを落葉することで樹の体内から塩分を出すというメカニズム。
体感してみると、さらにビックリです。葉っぱはちぎってはいけないので、水に落ちたもので試してください。

マングローブ観光で重要なのは潮位です

  • 潮位が高い時間には、マングローブの奥までカヌーで入ることができマングローブの植物たちをじっくり観察することができます。
  • 潮位が低い時間には、かなりの部分が干潟になるのでマングローブの奥には行けませんが、干潟の生き物たちを観察することができます。

今回は、潮が上がっている時間に伺ったので、見ることができませんでしたが、マングローブで生きる生き物たちの写真をマングローブ公社から提供いただきました。

奄美マングローブに生息するミナミコメツキガニ

【写真:(株)マングローブ公社】

干潟が出ると一斉に顔を出すミナミコメツキガニです。
このカニは、カニには珍しく前にも移動できるのが特徴です。

奄美マングローブに生息するハクセンシオマネキ

【写真:(株)マングローブ公社】

オスの片方の爪が極端に大きいハクセンシオマネキ。
大きい爪だけでなく、まるで「こっちに来い」と招いているような動きもユーモラスです。

奄美にいる絶滅危惧種のリュウキュウアユ

【写真:(株)マングローブ公社】

住用町の川にいるリュウキュウアユ。絶滅危惧種に指定されている貴重な魚です。
このマングローブには、潮位が上がるとリュウキュウアユのような川の魚だけでなく、ロウニンアジ(GT)のような海の魚も上がってきます。
海の魚と川の魚が混在しているのが面白いですね。

 

さて、今回の旅のテーマ、このマングローブがなぜ生命のゆりかごと言われるのでしょう?

植物から落ちた葉が土中で微生物によって分解され、貝やカニが食べます。
その貝やカニを魚や鳥が食べます。その魚や鳥の糞が植物の栄養になります。
そうした循環が森によって行われるので生命のゆりかごというわけです。
地球規模で行われている命の循環がミニチュアとしてここに詰まっているというのは感動しますね。

 

カヌーを使った自然観察を終え陸に上がったら、マングローブパークのレストランでちょっと腹ごしらえ。

それでは、次の目的地、住用町の「サン奄美」へ足を延ばします。

奄美にあるマングローブパークのレストラン

 

◆黒潮の森マングローブパーク

鹿児島県奄美市住用町石原478番地
TEL:0997-56-3355
営業時間:9:30-18:00
定休日:1/1のみ(12/31はカヌーは最終時間は要確認)
https://www.mangrovepark.com/

マングローブカヌー(1時間)
2,000円(小中学生1,800円、幼児無料) 入園料、損害保険付き

 

住用町の特産品や採れたての野菜を「サン奄美」で

ブラタモリでは紹介していなかったのですが、「黒潮の森マングローブパーク」の近くにある「サン奄美」では、住用町のお母さんたちが地域で採れた食材を使ってお菓子やドレッシングなどを作って販売しています。

ブラタモリで紹介されたサン奄美

代表の師玉洋子(しだま ようこ)さんに、お話を伺いました。

住用町のタンカンはおいしいと有名です。
やはり人気は、地元の名産であるタンカンを使ったジュースやかりんとう、ふくれ菓子だそう。

そのほか、パパイヤの漬物や島のタケノコのキムチ、島あおさなど、お土産にぴったりのものがいろいろ。
住用町の川で獲れたタナガ(手長エビ)もあります。
ゆうパックで島外に発送もできるそうです。

毎月1日はタンカンの日ということで、タンカンジュースとタンカンゼリーが1割引きでお得です。

ブラタモリで紹介されたサン奄美

レジ横にはタンカンジュース。1杯100円で飲むことができるので、マングローブカヌーで乾いた喉を潤すのもいいですね。ここでお母さんたちの手作りのお土産を買って、名瀬に戻ります。

◆サン奄美
(2020年現在は営業されておりません、お隣にある三太郎の里にて製造卸しと各営業所での商品販売をされています。)
鹿児島県奄美市住用町摺勝555-13
TEL:0997-69-5033
営業時間:9:00-17:00
定休日:不定休
https://sunamami.amamin.jp/

 

 

さて、今回の海と陸のキワをテーマにした旅はいかがだったでしょうか?
水と植物、動物が織りなす循環の中にわたしたち人間の営みがあるのですね。

カヌーツアーには、夜に行うツアーを行なっているガイドさんもいます。
新月の真っ暗な夜に満天の星を眺めながら川を下ったり、満月の夜にモノクロの幻想的な風景の中、生き物たちの声に耳を澄ませ川を下る体験も感動的です。
様々なツアーについては、あまみ大島観光物産連盟におたずねください。

 

 

【今回の旅の行程】
名瀬
↓ 車で30分
黒潮の森 マングローブパーク(奄美市住用町 ) 1時間
レストランで食事 1時間
↓ 車で10分
サン奄美 (奄美市住用町 ) 30分
↓ 車で 40分
名瀬

 

今回取材した場所

◆黒潮の森マングローブパーク

鹿児島県奄美市住用町石原478番地
TEL:0997-56-3355
営業時間:9:30-18:00
定休日:なし(1/1はお休み)
https://www.mangrovepark.com/

 

◆サン奄美
(2020年3月現在は営業されていません、お隣の三太郎の里にて製造卸しを行っております)

鹿児島県奄美市住用町摺勝555-13
TEL:0997-69-5033

https://sunamami.amamin.jp/

 

★ 参考資料

NHK ブラタモリ「タモリのブラブラ足跡マップ」 #66 奄美大島 ~自然をいかした 奄美の”宝”とは!?~
https://www.nhk.or.jp/buratamori/map/list66/index.html

「ブラタモリ 12 別府 神戸 奄美」
監修NHK「ブラタモリ」制作班 株式会社KADOKAWA 2017/12発行

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

Webクリエイター、ITサポーター、奄美大島紬のポケットチーフ「フィックスポン奄美」代表。東京出身。縁あって奄美大島出身の夫と結婚。以来毎年奄美大島を訪れ、2012年奄美大島に移住。奄美の自然、人、文化、食べ物が大好きで、島の隅々まで日々探検中!

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