ネイチャーワンダーランド~vol.2|マングローブってどんなところ?

島コト

2019/01/23

ペン

奄美野生生物保護センター

うがみんしょ~らん。奄美野生生物保護センターの髙橋 周作です。

 

今回のテーマは、奄美大島の代表的な自然のひとつである「マングローブ」についてです。

ネイチャーワンダーアイランド~vol1|なぜ奄美大島には希少野生生物が多く残っている?
ネイチャーワンダーランド~vol2|マングローブってどんなところ?
ネイチャーワンダーアイランド~vol3~外来種の実態、防除の最前線

奄美大島のマングローブは日本で2番目に大きく、面積は70万㎡以上にも及びます。
また、海水と淡水が混ざり合う「汽水域」は多くの生きものの住処にもなっており、絶景と生き物観察が出来る、奄美の自然を楽しむのにオススメの場所の一つなんです!

 

そんなマングローブの魅力をより解明するべく、奄美市住用町にある、「黒潮の森マングローブパーク」でカヌーガイドをされている加藤 勝輝さんにインタビューしてきました!

マングローブカヌー出発前
髙橋(以下:高):こんにちは、今日はよろしくお願いします!
加藤(以下:加):よろしくお願いします。早速ですが、靴を履き替えて準備ができたらカヌーで出発しましょう!

高:あれ?ツアーではずっとカヌーに乗りっぱなしでマングローブのトンネルに行くから、履き替える必要はないんじゃないですか?

加:いえ、今回巡るコースは干潮コースになるため、干潟に上がります。そのため、泥などつかないように靴の履き替えをオススメしています。マングローブは潮の満ち引きで景観ががらっと変わるんですよ。大潮の時は2mも潮位が変わることもあります!

髙:そうなんですね!マングローブのカヌーツアーは干潮時と満潮時でコースが違うのか。。干潮コースではどんな生き物が見られるのか楽しみです。早速行きましょう!

 

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ゴム草履に履き替え、ライフジャケットを着用。カヌーのレクチャーも受け終え、準備が完了したところで、いよいよ日本で2番目に大きい奄美大島のマングローブ林へいざ出発!
しばらく漕いでいると、干潟となっている場所を発見・上陸しました。

干潮時の奄美大島マングローブ林

マングローブ林(干潮時)

 

髙:上陸!干潮だとこんなにしっかり植物の根を見ることができるんですね。でも、潮水に浸かっても枯れないなんて不思議です。

加:髙橋さんいいところに気づきました。そこがポイントで、マングローブは海水と真水が混じる汽水域に生育している植物群落を指しています。奄美大島に生育しているのはメヒルギオヒルギという2つのヒルギ科の植物のみです。

まずは、このちいさく丸みを帯びている葉っぱを見てください。

奄美大島のマングローブのメヒルギ

加:これは「メヒルギ」。葉が丸く小ぶりな植物でマングローブの沿岸部に生育しています。

この植物は、”吸収根”といって根の中にコルクのような組織があり、そこで海水を濾過して体内に真水を供給しています。

メヒルギ 板根

髙:なるほど、根もよくみると板状になってますね。これは「板根(ばんこん)」ですか?

加:そうですそうです。では、こちらの先が尖った大きい葉を見てください。

オヒルギ

髙:この大きい葉をしているのが「オヒルギ」ですか?

加:そうです。これで見分け方はばっちりですね。何か気づいたことはありますか?

メヒルギとオヒルギの違いを探す様子髙:なんかちらほらと、、黄色い葉っぱがあるような、、?

加:さすがですね。オヒルギはメヒルギと比べて水分を吸収する力が弱いため、1枚の葉に塩分を集中させることで葉全体に真水を送ることができています。なので、この黄色い葉をかじると少し塩味が効いていますが…

ここは奄美群島国立公園の特別保護地区に位置しているので葉をちぎることは規制されていますよね?

髙:加藤さんもさすがですね。

マングローブは国立公園の特別保護地区に指定されているため、枝を折ったり、動物を捕獲するといった行為は規制されています。このウルトラマンみたいなサキシマスオウのタネも原則採取はダメです。植物の生きるための戦略を間近で感じられるのは貴重な体験ですね。

サキシマスオウの種

サキシマスオウの種

加:マングローブは生き物にとって大切な場所であり、多くの生き物が住処として利用しています。地面を見ると、ポツポツ穴が開いているのはすべてカニの巣穴です。すべての種を確認したわけではありませんが、ミナミコメツキガニやオキナワハクセンシオマネキ、オサガニなど数多くのカニがマングローブに生息しています。

オオキナワハクセンシオマネキ

オキナワハクセンシオマネキ

 

ミナミトビハゼ

ミナミトビハゼ

高:じっとしているとコソコソ出てくるのがかわいいですよね。カヌーを漕いでいる最中、水面をのぞくと魚が見えたり、ミナミトビハゼがはねたり、サギやシギ類がエサを食べに来たりと、生き物のつながりが分かって面白いですね。カヌー乗り場の前で座って話す男性二人

加:エコツアーガイドとして、島民の1人として、意識していることは「来て頂いた観光客のみなさんに奄美大島の特徴的な自然環境であるマングローブを”五感”を使って楽しんでもらうこと」。

1時間という限られたツアー時間の中で、日々伝え方や生き物の見せ方など工夫するようにしています。もちろん、自然を破壊するようなやり過ぎた行為がないかも、ツアー中は注意して目を光らせてますよ。

 

カヌー乗り場の前で話す男性

髙:”五感”を使ってですか・・?

加:そうです!「五感を駆使して自然を体験する」。マングローブの魅力としては、”自分の手で”カヌーを漕ぎ、素晴らしい景色を見て生き物の鳴き声を聞いて、全身を使って自然を感じることが出来るスポットだと私は感じています。

髙:なるほど、、確かに奄美大島の自然を体験できる場所、という意味ではマングローブカヌー体験は非常に重要な場所だと思います。
今度はぜひ満潮コースでマングローブのトンネルを体験してみたいです!

加:いつでもお待ちしてますよ。ただ、今度はしっかり潮見表でチェックしてきてくださいね。

髙:今日はマングローブについていろいろ教えて頂きありがとうございました。

加:ありがとうございました。

奄美大島のマングローブでカヌー

本日紹介した生き物の他にも、奄美大島のマングローブには数多くの動植物が生育・生息しています。みなさんも干潮・満潮コースそれぞれのマングローブを体験しに行ってみましょう!

取材協力:マングローブパーク カヌーガイド 加藤 勝輝 様

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この記事を書いたフォトライター

奄美野生生物保護センター

奄美野生生物保護センター

奄美群島の自然や生き物に関する展示を行う環境省の施設。

野生生物の調査、外来種対策、自然観察会を通した普及啓発や世界自然遺産登録に向けた取組などを総合的に行う拠点にもなっている。

開館時間:午前9時30分~午後4時30分

休館日:毎週月曜日(祝日を除く)、年末年始(12月29日~1月3日)

住所:鹿児島県大島郡大和村思勝字腰ノ畑551番地

電話:0997-55-8620

管理協力: 鹿児島県自然保護課、奄美群島12市町村

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