ネイチャーワンダーアイランド~vol.4|世界中でここにしかいない! 奄美の多様な鳥たち

島コト

2019/03/08

ペン

奄美野生生物保護センター

こんにちは、奄美野生生物保護センターの水田です。奄美の自然や生きものについてお伝えする本シリーズ、今回は奄美の「鳥」についてのあれこれをご紹介します。

ネイチャーワンダーアイランド~vol1|なぜ奄美大島には希少野生生物が多く残っている?
ネイチャーワンダーアイランド~vol2|マングローブってどんなところ?
ネイチャーワンダーアイランド~vol3~外来種の実態、防除の最前線
ネイチャーワンダーアイランド~vol4|世界中でここにしかいない! 奄美の多様な鳥たち

 

さて、さっそくですが問題です。奄美群島には何種類くらいの鳥がいるでしょうか。50種くらい? それとも100種くらい?

奄美大島のヒカンザクラの花の蜜を吸うメジロ

ヒカンザクラの花の蜜を吸うメジロ

 

答の前に、ヒントとして日本全体で確認されている鳥について述べると、その数は630種あまりとなっています。

奄美群島の面積は日本全体の0.3%しかないのですから、仮に面積比だけから考えると奄美群島にいる鳥はすごく少ない計算になります。しかし、もちろんそんなことはありません。

夜の森で獲物を探すリュウキュウコノハズク

夜の森で獲物を探すリュウキュウコノハズク

 

NPO法人奄美野鳥の会が発行している『奄美の野鳥図鑑』によると、奄美群島で確認されている鳥は、なんと330種以上にのぼるそうです。日本で見られる半分以上の種類が、日本のわずか0.3%の広さの土地で確認されている、ということになります。これはすごいことですね。奄美群島はたくさんの鳥がいるとても貴重な地域であると言えます。

春に奄美に渡ってきて子育てをするアカショウビン

春になると奄美に渡ってきて子育てをするアカショウビン

 

それでは次の問題です。なぜ奄美群島にはそんなにたくさんの鳥がいるのでしょうか。

この疑問には一言で答えることができません。いくつかの答がありますので、順を追って説明していきましょう。

 

1つ目の答は、鳥が生活するいろんな環境がある、ということです。

奄美群島には、森、河川、サンゴ礁で囲まれた海岸、マングローブ林、干潟、人が開いた農耕地など、さまざまな異なる環境があります。
異なる環境には異なる種類の鳥が生息しているため、奄美群島全体で見ると、鳥が生活する場所が数多く存在している、ということになります。

奄美大島の金作原

観光地としても有名な金作原には、森林性の鳥がたくさん住んでいる

奄美大島の海

奄美大島北部、大瀬海岸の広大な干潟では水辺の鳥が多数見られる

 

2つ目の答は、奄美群島が日本列島の中では南に位置していて、冬でも比較的暖かいこと。

夏の間、日本本土やそれよりも北の地域で子育てをした鳥たちの中には、冬を越すために南に移動してくる種類がいて(これを「冬鳥」と呼びます)、奄美群島はその移動先の1つとなっています。
このような冬鳥が過ごす場所のことを「越冬地」と呼びますが、奄美群島は快適な「越冬地」として、多くの冬鳥たちに利用されているのです。

奄美群島で越冬する代表的な冬鳥のサシバ

奄美群島で越冬する代表的な冬鳥、サシバ

 

3つ目の答は、奄美群島が九州から台湾の間に多くの島が並ぶ「琉球列島」の中に位置しているという地理的な理由にあります。

広い海の中に点々と浮かぶ琉球列島は、海の上を飛ぶ渡り鳥にとってかっこうの休憩場所になります。
毎年、春と秋の渡りの時期には数多くの鳥たちが奄美群島で休んでいきます。奄美群島で確認される鳥が多いのは、この地を通過する渡り鳥たちが立ち寄っていくからでもあります。

渡りの時期に見られためずらしい鳥のレンカク

渡りの時期に見られためずらしい鳥、レンカク

 

4つ目の答は人間側にあります。奄美群島には鳥だけでなくそれを見る人もたくさんいます

いくら鳥がいても、それを確認する人がいなければ「たくさんの鳥がいる」ということは認識できませんね。奄美群島でたくさんの鳥が確認されているのは、この地域の鳥に注目している人が多いから、とも言えると思います。

奄美大島での自然観察会

鳥を見る観察会の様子

 

ではさらに問題です。奄美群島の鳥はなぜそれほどまでに注目されるのでしょうか。奄美や沖縄の島々には、鳥を見るために日本全国から、いや世界各地から人々がやってきます。何がその人たちを惹きつけるのでしょう。

 

それは、これまで述べてきたように多様な鳥類がいることに加え、世界中にこの場所にしかいない鳥、いわゆる「固有種」が数多く生息しているということに尽きると思います。

この地域に「固有種」が多い理由は本シリーズの第1回で述べられたとおりですが、おさらいすると、ユーラシア大陸とくっついたり離れたりを繰り返した長い歴史のなかで、この場所だけで生き残ったり、あるいはこの場所であらたに進化して生まれた生きものが数多く存在する、ということになります。

この場所にしかいない生きものがいる、それだけで、奄美群島は世界的に見ても貴重な地域となっているのです。

奄美大島特有の子育てするオオトラツグミ

奄美大島にしかいないオオトラツグミの子育て

 

現在、鹿児島県の奄美大島と徳之島、それから沖縄県の沖縄島北部と西表島を「世界自然遺産」に登録するために、さまざまな準備が進められています。この地域が世界自然遺産の候補地になったのは、今回ご紹介したように、固有種を含む生物多様性の豊かさがあるからこそなのです。

 

では最後の問題。この自然の素晴らしさをこれからも残していくために、私たちは何をすべきでしょうか。いろいろあると思いますが、その答えはここではあえて書きません。皆さん一人一人考えてみてください。そうして考えること自体がとても大切なことだと思います。

奄美大島の森

新緑の奄美大島の森

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この記事を書いたフォトライター

奄美野生生物保護センター

奄美野生生物保護センター

奄美群島の自然や生き物に関する展示を行う環境省の施設。

野生生物の調査、外来種対策、自然観察会を通した普及啓発や世界自然遺産登録に向けた取組などを総合的に行う拠点にもなっている。

開館時間:午前9時30分~午後4時30分

休館日:毎週月曜日(祝日を除く)、年末年始(12月29日~1月3日)

住所:鹿児島県大島郡大和村思勝字腰ノ畑551番地

電話:0997-55-8620

管理協力: 鹿児島県自然保護課、奄美群島12市町村

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