【体験型観光~大和村編②】復活した伝統漁法を体験~トビウオローブ引き漁~

島遊

2016/06/03

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中村 修

羽を広げたトビウオ(奄美)
トビウオは奄美大島の人々にとって懐かしい初夏の味だ。野山にイジュの花が咲き、海岸にはウミガメが産卵に訪れる5月中旬。梅雨入りと共にトビウオの群れは産卵のために島に接岸する。以前は大和村の各集落にトビウオ網があり集団で漁をしていたと聞くが、最近は目にすることはなくなった。トビウオ漁が衰退した原因は自然環境の悪化によるトビウオ資源の減少だろうか?海面を滑空する“雄姿”は目にするも商品として市場に出回ることはほとんどなくなってしまった。消費者にとって地場産トビウオは“幻の魚”だ。

与論島発祥の「トビウオロープ引き漁」(大和村)

トビウオの漁法は与論島発祥の「トビウオロープ引き漁」と呼ばれる浮き敷き網漁で行われる。長さ200メートル、高さ8メートルの漁網と、方言で「スルシカ」と呼ばれるトビウオを威嚇するためのひもを絡めた脅しロープ300メートルを連結し、総延長500メートルの造り。網とロープでトビウオを囲い込み、徐々に範囲を狭め網で絡めとる。船長は水面を飛ぶ数匹のトビウオや風向き、潮の流れを読み取り、網を入れる。トビウオ漁を占う島の方言に「てぃーつ とぶぃば しゃーにゃ ぶり」(一匹飛ぶと海の中には群れがいる)という格言があるが、トビウオトープ引き漁は限られた情報から状況を読み取る船長の判断力と阿吽の呼吸で作業を行う乗組員のチームワークが漁獲を左右する漁だ。

トビウオロープ引き漁で獲れたトビウオ

夏場、産卵のため接岸するトビウオは脂が少なく上品で淡白な味わいだ。トビウオ料理といえばアゴ出しや一夜干し、干物が有名だが取れたての刺身はプリッとした歯ごたえで格別な味わい。漁の合間に船上で食べる漁師メシの刺身は陸で食べるソレとは全くの別物で至極の旨さだ。また、「あご」と呼ばれる小さなサイズは天婦羅にして頭からまるごと食べることができる。ほのかな風味が鼻腔に抜ける絶品料理だ。トビウオは、大・中・小、サイズごとに料理法が異なり、それぞれの味を楽しめるのも魅力だろう。

与論島発祥の「トビウオロープ引き漁」(大和村)

国直集落まるごと体験では、大和村や奄美漁協、与論漁協など関係機関の協力のもと、トビウオロープ引き漁の復活に取り組んでいる。将来的には、伝統漁法の再生はもちろん、トビウオ食の普及や加工品の開発といった食文化の伝承にも積極的に取り組みたい。まずは多くの人たちにトビウオ漁や食文化を知っていただくため「トビウオロープ引き漁体験ツアー」の開催を計画している。自分の手で網を引き、生きている魚を触り、新鮮なトビウオを味わうことができるツアー。ぜひ多くの人にツアーに参加し漁と食を体験していただきたい。大海原に浮かび、船上で味わうトビウオはどこか懐かしい島の味がするはずだ。

新鮮なトビウオの刺身

新鮮なトビウオの開き

 

 

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この記事を書いたフォトライター

中村 修

中村 修

島おこしプランナー/NPO法人TAMASU代表。故郷の奄美大島、国直集落を愛するあまり会社を辞めNPO法人を設立。奄美大島の自然や文化を活用した島おこし活動に取り組む。現在は地域住民と共に「国直集落まるごと体験ツアー」を開催し集落民一体となったシマ(集落)づくりを目指す。

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