奄美の森で、いきものナイトウォッチング~アマミノクロウサギ、ヤマシギ

島遊

2016/07/18

ペン

伊達 優

奄美大島の中東部にある住用町は、入り組んだ海岸線と奥深い森を持つ自然豊かな農村です。山の合間に沈むサンセットを鑑賞したあとは、豊かな夜の世界へ出かけてみてはいかがでしょうか。

森へ一歩踏み込めば、そこは生き物たちの世界です。

人は、外部からの訪問者でしかありません。

少しだけその世界を見せてもらう気持ちで、ナイトウォッチングに出かけました。

エリアに入れば、とにかくスピードは最低限に落とし、徐行運転が鉄則です。

島の代表的な野生動物と言えば、アマミノクロウサギです。

奄美大島と隣の徳之島だけに住んでいる固有種で、近年、生息数の減少が危惧され、国内希少野生動植物種にも指定されている動物です。

クロウサギは、昼の間、森の茂みや土穴に隠れています。

そして星が出始めるころに動き出して、草や木の実などを食べます。

貴重なクロウサギを観ることができる住用町のスポットで、さっそく出会えました。

まんまるかわいいクロウサギ!

 

夜間、山の道路に出てくるアマミノクロウサギ

このクロウサギは、子供のようで毛が柔らかそうな感じでした。

ここは、とある林道です。

林道は、林内の畑への通行や木を運び出す業者のための道です。

しかしまた、森に住む生き物たちにも良く使われている場所でもあります。

道路の脇を好むアマミヤマシギも、よく観察することができました。

アマミヤマシギもまた固有種で、沖縄諸島と奄美群島にだけ住んでいます。

 

沖縄諸島と奄美群島にのみ生息するアマミヤマシギ

好奇心が強いのか、ゆっくりと近寄ると逆にこちらが観察されているように感じました。

近寄り過ぎると、バサッと垂直方向へ飛び立ちます。

 

細長い翼を天高く振り抜き、長いくちばしを仰ぐその姿。

星明りに、現実離れしたそのシルエットの残像が。

奄美の森の中にいることを、しみじみと感じさせてくれました。

奄美の星空

一番たくさん出会えたのが、オットンガエル。

お相撲さんのようなタイプのカエルです。

奄美大島と加計呂麻島の固有種、オットンガエル

こちらも、奄美大島と加計呂麻島の固有種です。

子供から大人まで、たくさんのオットンガエルを観察できました。

3日間のナイトウォッチングで、野生動物に近づくコツが少しわかりました。

例えば、ヘッドライトの光軸を下げて、眩しく感じないようにしてあげたら良い結果でした。

少しずつ工夫しながら、なるべく生き物たちを驚かせないようにしました。

間近で観るワクワク、ドキドキ感は、新鮮そのもの。

それはきっと、言葉の無い自然との対話なのでしょう。

森でのナイトウォッチングは、素敵な自然体験を届けてくれるものです。

更にもう一歩楽しみたい方は、カメラを持参すると良いでしょう。

写真は後から観かえすことで、直感的に現場を思い起こすことができます。

また現場ではよく観ることができなかった細部を、見直すこともできます。

この再体験の段取りが、自然への洞察を深め、思いを積み重ねてくれるのだと思います。

 

天然記念物アマミノクロウサギ

ナイトウォッチングは、楽しく森の住人たちを知ることが目的だと思います。

生き物たちの生活になるべく負担がかからないように、自身で考えて行動することが必要だと思います。車のスピードは落とし、動物たちを追いかけたり驚かせないように配慮をお願いします。

自然観察の経験があまりない方は、専門のガイドさんとの同行をおすすめいたします。

森での行動をわきまえたガイドさんは、知っておくべきことを教えてくれますし、危険を避けることにもつながるでしょう。

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この記事を書いたフォトライター

伊達 優

伊達 優

写真歴22年。沖縄に14年間在住の後、奄美大島へ移住して3年。ライフワークとして、海岸を題材とした写真作品を制作している。現在、分野を拡げてフォトライターとしても活動を展開中。 2011年、カフェ・アソシアにて二回目の個展“orbit”開催。seakayak~海を旅する本~vol.27~39に、記事&写真の連載。コミュニティFMニライの番組”Nature Human”にて、企画&パーソナリティを勤める。

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