兵庫県から奄美大島へ移住。美しい海を仕事の場にするチャレンジャー:遠藤優人

海辺で笑顔の男性

フィリピンが発祥、日本では沖縄などで話題の「マーメイド体験」

ラッシュガードのような素材でできた下半身を覆うマーメイドスーツとフィンをつけ、海辺や水中で写真を撮影したり泳いだりできる現在注目のマリンアクティビティだ。このマーメイド体験を2017年7月から奄美で行っているのが、Oceanzの遠藤優人さん。奄美大島に住んで2年半。もともとは、兵庫県の出身だ。

 

ガーナの子供と記念撮影

「幼い頃から海外に憧れていて、高校生からニュージーランドに留学し、シアトルの大学にも通いました。その後、日本に戻ってきて、地元の兵庫で広告の仕事をしていました」

広告の仕事を退職後、もとから大好きだったというチョコレートの産地、ガーナに行き、その後、エジプトへ。そこで、ひょんなことから、スキンダイビングの世界に出会った。

「エジプトのダハブには、海水の透明度が高く、サンゴの種類が豊富な紅海があるんです。そこで、まずスキューバダイビングのライセンスを取りました。すると、知り合った方から『フリーダイビング(注※タンクなどを付けずに水中に潜る競技)ってものもあるよ』と教えられて」

フリーダイビングで海を潜る男性

映画『グランブルー』などで知られる、体ひとつで100メートル以上を潜るフリーダイビング。その魅力に、遠藤さんはすぐにハマった。

「その後、エジプト以外の中東も巡り、一度帰国したんですが、どうしてもフリーダイビングが忘れられなくて。エジプトでフリーダイビングを教えてもらったショップの姉妹店がタイにあり、そこに行ってSSI フリーダイビングインストラクターの資格を取りました」

 

最初は、「何メートル潜れるか」といった、記録を追い求めた潜り方をしていたという。しかし、海の中で感じる静けさ、水深15メートルほどで感じる浮きもしなければ沈みもしない中性浮力の状態、全く音が聞こえず、周囲のすべてが深い青で、その中に身一つでいる体の境界線が溶けていくような感覚に、「ただ、海の中にいることが楽しい」というシンプルな結論を遠藤さんは見出した。

「そこで、ずっと海の近くにいることができる仕事、自然に触れ続けることができる仕事をしたいと思い、素潜り漁師になりたい、と思ったんです」

素潜り漁の男性

帰国後、日本で素潜り漁が盛んな地域を調べ、奄美大島にたどり着く。現在は名瀬漁協に所属し、素潜り漁師としても働いている。

「そこから、なんでマーメイド? って普通は疑問に思いますよね(笑)。でも、僕の中では全部繋がっているんです。海を身近に感じられる機会という意味で」

海辺で笑顔の男性

遠藤さんがマーメイド体験のことを知ったのは、2016年の夏。たまたま知り合いから聞いただけだったそうだ。

「面白そうだ!」と感じた遠藤さんは、すぐさま、フィリピンにある「フィリピン・マーメイド・スイミング・アカデミー」へ行く。「フィリピン・マーメイド・スイミング・アカデミー」は世界初の人魚になるための学校。衣装を身に着けたまま泳いだり、水中での表現をする、“マーメイディング”と呼ばれるスキルを学べる場所だ。

マーメイドコスプレの男性

「マーメイドの衣装を着て潜ることで、自分が魚になっているような、本当に人魚になったような、より海に近しい感覚、海の一部となった感覚があったんです。

これは本当に面白いし、奄美でもぜひやりたいな、と。素潜り漁には禁漁期間もあるので、その間は時間に余裕があります。だったらその間、マーメイド体験を通して、より海を楽しく身近に感じられる機会を提供できたら、と思ったんですよ」

 

筆者も先日、初めてマーメイドスイムを体験した。普通にフィンをつけて潜るのも良いが、コスチュームをまとうことで不思議と確かに海と距離が近くなったような気がした。

奄美の美しいビーチで、貝殻の形をしたソファに座ったり、花冠をかぶったりして、いわゆる「インスタ映え」する写真を撮るのももちろん楽しいが、このコスチュームで泳ぐと、本当により海が楽しめると思ったものだ。

子どもと女性のマーメイドコスプレ

奄美大島の印象について聞くと、「自分さえ閉ざさなければ、受け入れてもらえる島」だと遠藤さんは話す。

海の中にいると、自分の境目がなくなる感覚を覚えるように、奄美の海の懐はとても深い。

 

「実は僕、小学生の時、将来の夢は“船長”って書いていたんですよ。今、素潜り漁師として働いていて船も持っていて。夢が叶っているんですよね。不思議です」

 

今後のことを聞くと、マーメイド体験のみならず、ゆくゆくはフリーダイビングのコースを作るなどさまざまな形で海の魅力を伝えていきたい、と遠藤さんは語った。

かわいくて、目を引いて、楽しい写真を撮るだけじゃもったいない!

奄美の海の奥深さを知り、海と身近になれる感覚を、あなたもぜひ感じてみては?

 

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【Oceanz 遠藤優人】

1981年生まれ、兵庫県出身。海と旅とチョコレートを愛する、ガイド・インストラクター兼素潜り漁師。安心・安全のもと奄美大島の海をより楽しんでもらうためにOceanzを2017年立ち上げる。

 

 

Oceanz

住所:鹿児島県奄美市笠利町平1295−2
TEL:0997-57-1987
営業時間:7時〜20時
定休日:年中無休
HP https://www.oceanz-jp.com/

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

作家、ILAND identityプロデューサー。著作に『ろくでなし6TEEN』(小学館)、『腹黒い11人の女』(yours-store)。短編小説『こうげ帖』、『海の上に浮かぶ森のような島は』。2013年、奄美諸島加計呂麻島に移住。小説・コラムの執筆活動をしつつ、2015年加計呂麻島をテーマとしたアパレルブランド、ILAND identityを開始。

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