緑色の葉がざわめく、サトウキビ畑が広がるイメージが強い奄美大島ですが、実はかつて、奄美大島でもお米が多く作られていました。
薩摩藩の支配下であった時代はお米の二期作が可能で、年貢としてお米を納めていましたが、その後年貢は「サトウキビ」に転換させられ、水田は徐々に無くなっていきました。
しかし、今もなおかつての水田が広がる風景が見られるのが、龍郷町秋名・幾里集落です。
水田には多くの野鳥も訪れ、のんびりとした農村風景は、奄美大島の他の地域では見られない光景です。
そんな秋名・幾里集落で、新しい観光体験プログラムが生まれようとしています。
それが「マコモ茶」づくり体験。
聞きなれない「マコモ」とは、どんな植物なのか?
どんな効能があるの?
と疑問が盛りだくさんのなか、2017年9月に行われたモニターツアーを取材してきました。
そもそも「マコモ」とは?
イネ科マコモ属の多年草「マコモ」。同じイネ科でもお米より栽培に手間がかからず、春に植えると秋には収穫できるスーパー作物と言われています。
マコモは成長するときに沼の水質をきれいにする働きがあるため、自然を守る取り組みとして植栽するケースも増えているようです。
奄美でマコモが栽培されているのは、主に食べるため。
新芽から2~3mほど成長すると「黒穂菌(くろぼきん)」が寄生し、根元部分の茎が肥大します。
その部分をマコモダケといい、やわらかい筍のような食感で中華料理によく使われます。
独特の食感でとってもおいしいんですよ。
茎以外に、葉もお茶として使用できるとなると、まさに捨てるところのない優れものです。
マコモを愛して集落に移住?!
マコモに魅了されて集落に移住し、マコモ茶体験プログラムをはじめようとしている女性がいます。
それが、今回のモニターツアーでの体験プログラムの講師になっている、藤井菊美さん。
ツアー参加者に説明をする藤井さん
もともと2012年に、家族とともに東京からIターン。
名瀬に住み、ハンドメイド作家として作品を販売したり、イベントでワークショップを行ったりと活動をしていました。奄美大島の自然の素晴らしさや島人の生活の知恵などにも興味を抱いていたなか、ある日、秋名集落の田んぼでマコモに出会ったのだといいます。
「田んぼに入った瞬間、マコモの生命力あふれるエネルギーに圧倒され『これだ!』と確信したんです」と藤井さん。
マコモの魅力を知り、その無限大の活用法を考えるうちに、引っ越しを決意。家族とともに龍郷町幾里集落へ移住したそうです。
いまではご自身でマコモの栽培にもチャレンジ。
収穫したマコモを使って、マコモ茶を製作。イベントで販売なども行っています。
みんなでわいわい、マコモ茶づくり体験に潜入
秋名幾里集落といえば、有名なのが国指定重要無形民俗文化財である「ショチョガマ」と「平瀬マンカイ」というアラセツ行事。豊作の感謝と来季への祈りを捧げる、大切な伝統行事です。
《400年の歴史を誇る龍郷町・秋名集落の豊年祭「ショチョガマ」「平瀬マンカイ」》
今回、この伝統行事への理解を深める「アラセツ満喫ツアー」が開催されました。
集落を活気づけようと企画。今回は「秋名幾里(あきないくさと)魅力化プロジェクト」のフィールドワークを実施している芝浦工業大学にご協力をいただき、模擬ツアーが行われました。
アラセツ行事を含む2017年9月25日から9月27日までの2泊3日間の期間中で、モニター参加は大学の20代の生徒さんたち。
さらに八月踊り体験やアラセツシンポジウムへの参加に続くメインプログラムとして、「マコモ茶づくり体験」が組み込まれました。
マコモ茶作りの前にマコモ茶を知って欲しいと、参加者に配られた冷たいマコモ茶。
マコモ茶初体験です!
口にすると最初に「イ草」のような緑豊かな山の香りが鼻を突きぬけ、後に口の中にコーン茶のような香ばしさが残ります。
苦味やクセが無くて飲みやすい!もちろん熱いお茶としてもおいしくいただけるそうです。
それではさっそくマコモ茶づくりをスタート。
マコモの葉は十分乾燥させたものを使います。まず長いマコモの葉を1㎝くらいにカットしていきます。
乾燥した葉は飛び散りやすいので、袋を膝元に置いて中でカットしていきます。
モニター参加の学生さん達も黙々と作業を進めます。
みんながカットしたマコモの葉。ネギのようにも見えますね。
次は集めたマコモの葉を乾煎りします。
この乾煎りの工程により、香ばしさと甘味やまろやかさが強調されます。
大きな鍋に大きな木製のしゃもじが給食室を思い出しますね。
会話も弾み、学生さんたちにも少しずつ笑顔が出始めます!
そしていよいよ袋詰めの工程へ。
ティーバッグ八分目ほどにマコモ葉を詰めます。(およそ30gが目安です)
用意された持ち帰り用の袋に入れ、乾燥剤と表紙を入れてできあがり。
お土産も無事にできあがりました。
みんなが無事お土産を作り終えたところで、自分たちのマコモ茶を手に取り記念撮影!
合言葉は「マコモ最高~!」
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知られざる植物、マコモの魅力にたっぷりと触れた一日でした。
育てやすくておいしいマコモ作りは、アラセツ行事の次に秋名・幾里集落を代表するものになるかもしれませんね。
今後のマコモ茶づくり体験については、藤井さんのブログに情報をあげていきたいとのことでした!
マコモ茶作りを体験したい方はぜひ、藤井さんのブログチェックしてみて下さいね。
この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER
タケミオ
タケミオさんが書いた他の記事を見る奄美市名瀬生まれ。大好きな文章書きを仕事にしたいと2016年からライターの勉強をスタート。地元主婦ライターとして、丁寧に島のことを伝えていくことを目指す。音楽が好きで、趣味はカラオケと楽器演奏。特にドラムやエレクトーン、三味線が大好き。