偉人や神道など歴史の跡が多く残る「住用町見里」の集落歩き

奄美の島の本当の魅力って、実は集落(シマ)に詰まっている、と私は思います。

ですが、集落の出身だったり、知人がいたりしない限り、なかなか知る機会の少ないのが実際です。今回は、ガイドさんと一緒に集落を歩き、その知られざる魅力を教えていただけるシマ歩きツアーに参加してきました。

①集落入口

奄美市名瀬の市街地から奄美市住用町(すみようちょう)へ入り、「奄美体験交流館」を過ぎると、すぐ右側にある「見里集落」。

 

見里②集落看板

現在の集落人口は168人で世帯数はちょうど100世帯ほど。(住用町役場統計2017年12月31日現在)。

 

「見里」と書いて「みざと」と読むこの集落。際立って大きな特徴がある集落ではありません。

でもガイドさんと歩くと、ディープで面白いシマの宝が盛りだくさん!集落歩きの魅力をお伝えします。

 

ガイドはここ見里集落ご出身で見里在住の川畑安秀さん。

④指を指す男の人の写真大石

 

苗字「師玉(しだま)」さんが多い集落

1700年代、當済(とうすみ)という与人(島役人)が島にいました。その当時の奄美は薩摩藩の配下。ある年、島が大凶作にみまわれ、飢饉に苦しむ島人をみた當済は、死を覚悟して薩摩藩に上納するための米を島民に与えた・・・。というエピソードが残っています。當済は島人の窮地を救った英雄なのです。

その當済の子孫が多く暮らしているのが、ここ見里集落であり、當済の子孫たちは「師玉」の姓を名のっています。集落のお墓を覗かせてもらうと、確かに「師玉家の墓」が多いです。

さらによく見てみると・・・「當」の文字の付くお名前を多数発見!

⑥師玉姓銘碑の写真

今でも師玉家に生まれた男性のほとんどが、當済にあやかって「當(当)」の文字が入った名前を付けられているのだそうです。

男性の師玉さんに会ったら名前を訊いてみたい・・・と思っていたら、出会いました。

男の人二人の写真師玉さん(右)

写真右側が師玉当洋さん。やはり當済の子孫とのことでした。

 

集落の基本 「カミミチ」と「ミヤ」と「イビガナシ」

奄美大島の集落にはそれぞれ「カミミチ」「ミヤ」があるのをご存知ですか?

集落の中を歩くと秘密の抜け道のような細道があります。そこは「カミミチ(神道)」と呼ばれ、その名のとおり「神様が通る道」として大事にされています。カミミチはいつもきれいに。

神道を歩く男の人達の写真⑧リュウキュウエゴノキ

 

この道をしばらく進むと「ミヤ」がありました。昔から大事な集落の行事はこの「ミヤ」と呼ばれる場所で始まるのだそうです。例えば、奄美大島の文化・アラセツ行事の「八月踊り」のスタートは、この「ミヤ」で神様にまず奉納します。また、秋の「豊年祭」では、まずミヤ参りをして相撲を奉納するのですって。

「ミヤ」の広場には「イビガナシ」と呼ばれる岩(左下の岩)があります。奄美には集落の始まりと関わったといわれる自然石を「イビガナシ」と呼んで、集落のご神体として祀っている地域も多いのです。

集落の人たちは、この場所を通るたびに、「イビガナシ」に手を合わせて拝むのだとか。

イビカナシに手を合わせる写真⑩ミヤのタブ木(神木)

 

イビガナシの後ろに大きく育っている木は「タブの木」。ちなみに「タブの木」がお線香の原料であることも教わりました。「タブの木があることで、いつも神様にお線香をあげているような気持になりませんか?」と川畑さん。

 

内海(うちうみ)の豊かで不思議なお話し

さて、ここからは集落の向かいにある内海へ。内海は海と集落の間にある不思議な場所。

一見すると池のようですが、端っこは外海と繋がっていて、川の水と海水が混ざってできているのが「内海」です。

川の水と海の水が混ざってできている内海の写真DSC_0572

内海の淵を外海に向かって歩いていくと、国指定天然記念物のリュウキュウカラスバトの「ウー、ウー」という牛のような鳴き声が聞こえました!牛みたいな声なので島では「ウシバト」と呼んだりするそうです。

さらに水際を進んで5分程。流木の枯れ木を踏む音は、まるでたき火をしている時のような「パチパチ」という音。足裏に伝わってくる感触もすごく心地イイー!

海水と淡水が混ざる岸辺には、珍しい植物がたくさんあるのだとか。大学の教授が研究のため、いらっしゃることもあるそうです。

時期によってはオオハマボウやハマジンチョウという花、シオマネキという珍しいカニがたくさん見られます。
実はこの内海、多くの伝説も残っています。

川畑さんが、奄美の昔の民俗について書かれた古書「南島雑話」にあるお話をたくさん教えて下さいました。

「内海でワニが捕獲された話。若い人が食べて何かあったら大変だから、まずは老人が煮て食べてみた。ウミガメみたいな味だった。」という話や、ジュゴンが存在した、珍獣がいた伝説など。

でも一番驚いたのは、川畑さんのお父さんが3M近くある「大うなぎ」を釣ったこと!。当時の写真がちゃんと残っていて見せてくださいました。大うなぎを持っている男の人の写真大うなぎ

 

まだまだ不思議な話がありそうな、見里集落。

川畑さんのご両親は奄美の昔話をたくさんしてくださったそうです。そんな思い出話も伺いながらの見里集落歩き。この集落が重ねてきたはるかな歴史を感じることができて、とてもワクワクするものでした!

しまバスも通っています!機会があったらぜひ見里集落に行ってみて下さいね。

 

奄美市住用町見里集落

集落の場所はこちらです。

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

奄美市名瀬生まれ。大好きな文章書きを仕事にしたいと2016年からライターの勉強をスタート。地元主婦ライターとして、丁寧に島のことを伝えていくことを目指す。音楽が好きで、趣味はカラオケと楽器演奏。特にドラムやエレクトーン、三味線が大好き。

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