『酒屋まえかわ』奄美黒糖焼酎と人を愛する店主がいる酒屋

島モノ

2018/03/25

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間瀬 るみえ(TLWorks)

奄美大島のお酒といえば「奄美黒糖焼酎」。

奄美群島のみで製造が許されるこの酒は、飲みやすく見えて実は奥深いのです。

黒糖焼酎を販売するだけでなく、その魅力を熱く伝える名物店主がいる酒店があると聞き、さっそく取材に伺いました!

酒屋まえかわの外観

奄美大島の中心街、奄美市名瀬港町にある「酒屋まえかわ」。

外観で目を引くのは、「酒屋まえかわ」の看板の上に掲げられた、奄美群島の地図。

奄美の海のようなコバルトブルーの看板には「ニライカナイの美酒 黒糖焼酎」として、著名な銘柄が島ごとに記されています。

 

酒屋まえかわの店主(カメラを向けると少し照れながら笑みをこぼしてくれた前川さん)

「酒屋まえかわ」店主、前川晴紀さん(52)は奄美大島の名瀬生まれ。

鮮魚商を営んでいたご両親は沖縄県出身、戦後沖縄から奄美に移り住んだそうです。

 

奄美大島で酒店をはじめたきっかけ

今から27年前(平成3年4月)、前川さんが25歳のときに店を構えました。

元々親戚が酒・米・タバコを販売する小さな商店を経営されていて、その商店を譲りうけたのが、お店を始めたきっかけだったそうです。

当初は、築40年の民家でたたみ5畳から始めた酒店。

現代とは違い、当時は法律で決められたように酒、タバコ、米などを、どこの店も同じ料金で提供しており、まったく儲けがなかったそう。

そんな時代の中、『自分なりの仕事場をつくりたい』と思い、平成9年に現在の場所にお店を構えました。

「当時は、酒屋をするには免許制で、販売価格も同じ。ライバル酒店は無数にあった。難しいこともあり、本当に心の底から何度も辞めようと思ったこともある。ただ店を建ててしまったからには・・・何としてでもやり続けないと。」と前川さんは思っていたそう。

仕事をする酒屋まえかわの店主
酒屋まえかわのおつまみの棚

 

前川さんと奄美黒糖焼酎との出会い

酒屋まえかわのお酒の棚

今からは想像しがたいが、その当時奄美の飲み屋さんではウイスキーが主流だったそうで、黒糖焼酎を飲んでる島人は本当に少なかったそうです。

どちらかと言うと黒糖焼酎は、【おっちゃんのお酒】という感じで若者達は飲まなかったそう。

かくいう前川さんも、酒店を始めた25歳の頃にはまっていたのは「日本酒」。

 

日本酒好きで地元の奄美黒糖焼酎を飲む機会が少なかった前川さんは、ある日突然、その認識を覆す銘柄に出会いました。

 

酒好きの前川さんが、入り浸っていたショットバー。そこである日、奄美黒糖焼酎『龍宮』(富田酒造)を勧められました。何気なく飲んでみたところ、「目から鱗が落ちるような衝撃を受けた」と前川さん。

「あのときの衝撃は、今でもよく覚えている」と話します。

 

ここから、勉強熱心な前川さんは、蔵元である富田酒造へ遊びにいく感覚で通いつめたという。

黒糖焼酎は、蔵元、銘柄ごとに製法や味の方向性が異なります。地元の黒糖焼酎を売るからには、どのような蔵元さんでどのような思いで作っているのか。それを知りたいと、熱心に勉強を重ねました。

勉強する酒屋まえかわの店主

酒屋まえかわの本棚

酒屋の奥にある本棚。鹿児島県にまつわる本や、黒糖焼酎の本、ビールの本などなど。勉強熱心のスタンスは昔も今も変わらないようです。

 

生まれ育った奄美大島でしか作れない黒糖焼酎

黒糖焼酎の魅力に目覚め、いつの日か必ず流行ると信じていった前川さん。

原酒から確認するため、多くの蔵元に足を運び、知識とその魅力の真髄への理解を深めていきました。

説明する酒屋まえかわの店主

黒糖焼酎の香り、味わい、製法、蔵元の姿勢。足と目と耳と舌で知識を蓄えてきた前川さんのお話はわかりやすく、黒糖焼酎への興味がどんどん沸いてくるものでした。

前川さんの黒糖焼酎の原点である富田酒造さんの『龍宮』。

山田酒造(龍郷町)さんの焼酎『長雲』は40度にも関わらず、柔らかい味わい。

減圧蒸留で焼酎のブームを起こしたのが、町田酒造(龍郷町)さんの『里の曙』。

そして、奄美で初めて女性の杜氏から作られたのが奄美開運酒造(宇検村)さんの『れんと』。

手書きの値札

値札には、酒造名と地名がすべて手書きで書かれています。知識だけでなく、酒造さんの焼酎に対する想いがひしひしと伝わってきました。

 

あなたにあった酒選びをお手伝い

酒屋まえかわの黒糖焼酎の棚

今、奄美群島ではハブ酒を入れて28の酒造会社があります。

ハブ酒の小瓶
どの酒造、どんなお酒も、たくさんの人の思いがあって造られています。

「お酒の価値=造っている人の価値。造っている人を好きになると、その焼酎も好きになるんだよ。
ことわざである『名は体を表す』と一緒で、この酒造さんだからこんな味、またこの味だからこんな人、と酒と人はリンクする。」

前川さんは、こう語っています。

 

酒屋まえかわを訪れてくれるお客様には、どのようなお酒を好んでいるのかなど話を伺いながら、お客様一人ひとりにあった酒選びのお手伝いが出来るようにと心がけているそう。

黒糖焼酎だけでなく、日本酒、ワイン、焼酎など、前川さんの知識は幅広く、いろいろな講義に参加したり、酒に関わる認定も取得しています。

酒屋まえかわのワインの棚

店内奥には、ワインもたくさん並べられており、また違った雰囲気を味わえます。

酒屋まえかわの地ビールの棚

奄美の地ビール(たんかん、黒糖、パッション)もあります。

酒屋まえかわの西郷どんとのコラボ焼酎

現在NHKで放送中「西郷どん」とコラボレーションした黒糖焼酎も。

 

奄美の方言で酒飲みのことを『せえごれ(大酒呑み)』と言います。
皆さんも、奄美を訪れた時には、一緒にせえごれになりませんか?

酒屋まえかわでは、多種多様のお酒と、酒好きの愉快な店主がお待ちしております!

 

 

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この記事を書いたフォトライター

間瀬 るみえ(TLWorks)

間瀬 るみえ(TLWorks)

フリーライター/ダンス講師 大阪市出身 バリバリの関西人でシティガール。2017年8月、大阪を離れ奄美大島へ移住 祖母が徳之島出身の奄美3世。現在はフリーライターと奄美のFOXYCANDYDANCESTUDIOにてダンス講師を行う。 奄美諸島の島人と自然に触れながらTLWorks(https://www.tlworks-japan.com/自身のブログで、テクノロジーと奄美諸島の魅力を発信中。

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