おいしい黒糖焼酎の秘密は豊かな水にありました!「川の名前」がつく黒糖焼酎とは?

島モノ

2018/03/27

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新井奈緒子

奄美大島で「お酒」といえば、ビールでも日本酒でもなく、「黒糖焼酎」を指します。

全国で唯一の地域産業として、奄美群島でのみ製造が許されているお酒。島外には出荷されていない銘柄もあり、奄美にくれば、たくさんの銘柄に出会うことができます。

 

そんな数ある銘柄のなかで、この奄美大島の美しい「水」を使って黒糖焼酎を作っている銘柄に着目して取材に向かいました。

 

おいしい天然水を求めて工場を移転!川の名前を配した焼酎とは

奄美空港から名瀬方面へ車を20分ほど走らせると、メガサイズの焼酎ボトルが見えてきます。
奄美大島の龍郷町にある奄美大島酒造前

こちらは龍郷町にある「奄美大島酒造」の酒蔵入り口。

自慢の銘柄3つが、お客様をお出迎えしています。思わず写真を撮りたくなるスポットですよね。

 

この3つのうち、一番右側にある「JOUGO(じょうご)」という銘柄。シマッチュ(島人)たちがこよなく愛する、奄美大島酒造で製造されている黒糖焼酎の中で一番人気の銘柄です。

実は「じょうご」は、龍郷町に流れる川の名前のこと。

今回着目する「水」は、まずこの「じょうご」についてです。

「じょうごは屋入川の上流部のことで、奄美で最もおいしい水と言われているんです」

とお話ししてくださったのは、奄美大島酒造株式会社の工場長、吉元厚夫さん。

奄美大島酒造前にあるメガサイズじょうごと吉元さん

「じょうごの川」の地下120メートルから自社のポンプで汲み上げた天然の地下水を、仕込みと割り水に使用しているそうです。

奄美大島酒造こだわりの黒糖焼酎づくり

黒糖焼酎づくりに欠かせない水へのこだわりは並々ならぬものがあります。

「昭和57年に、じょうごの水を求めて奄美大島の中心地である名瀬から、現在の龍郷町に移転してきまいした」と吉元さん。

工場を移動させるほどのおいしい天然水は、名瀬にお住まいの職員さんが毎日ペットボトルに入れて持ち帰るほどだそう。何ともうらやましいお話です。

 

みんなに愛されるじょうご。でも実は、この「じょうごの川」には兄妹悲恋の伝説があるんです。

”兄に殺された妹が「天降れ女(あもれうなぐ)」となって現れ、川の中に人を連れ込む”
といわれており、今も地元の人々は近づかないようにしているのだそうです。

しかしだからこそ、きれいな水がずっと昔から守られているのかもしれません。もしくは、きれいな水を守るために地元の人が代々語り継いできた伝説なのかもしれませんね。

奄美大島酒造がこだわる焼酎づくりの元となる水

もちろん、水に加えて、工場がある環境全体が焼酎造りに適しているのも、おいしい焼酎を作れる秘訣。工場の裏手には山があり、海からの風が当たることで、常に風通しがよく涼しい温度湿度が保たれています。温度管理、特に冷却作業が大変な焼酎造りには最適な場所だそうです。

また、奄美大島酒造で製造している黒糖焼酎は100%奄美大島産純黒糖を使用することにこだわっています。

おいしい黒糖と天然地下水、そして涼しい風の当たる環境。
素材と環境がそろうことで、大人気の黒糖焼酎が生み出されたのでしょうね。

 

きれいな水を有する龍郷町に集まる酒造会社

奄美大島酒造「じょうご」のほかにも、川の名前を持つ黒糖焼酎はあります。

同じく龍郷町、こちらは長雲山系の麓、大勝集落にある山田酒造。こちらにも、長雲峠の深い森を水源とする「山田川(やまだごう)」という川の名前を冠した銘柄があります。

龍郷町には、もうひとつ「町田酒造」という酒蔵もあります。「里の曙」という銘柄で人気の酒蔵ですが、こちらの杜氏さんも、龍郷町の水のきれいさについて強調されていたのを覚えています。やはり水にこだわって、龍郷町大勝に工場を建てたといいます。

龍郷町全景となる大きな模型

龍郷町の全景。オレンジの道が県道。山に囲まれた地形がわかる。

 

龍郷町内にある酒造会社は3つ。

このように酒造会社が龍郷町に集まった背景のひとつに、「きれいな水が豊富にあること」があるのではないかと思いました。

山と川、そして深い森の恵みにより、おいしい黒糖焼酎たちが生み出されていたのですね。

奄美大島にきたら、この素晴らしい自然のなかで育まれたそれぞれの銘柄を、ぜひお試しください。

奄美大島焼酎自慢の銘柄たち

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この記事を書いたフォトライター

新井奈緒子

新井奈緒子

埼玉県久喜市出身。エステティシャン、医療機器営業、病院総務課での勤務を経て2017年10月、奄美大島移住と同時に龍郷町地域おこし協力隊に就任。旅行者とシマッチュの架け橋になることをめざして島のことを日々勉強中。現在、FMたつごうにてパーソナリティもしています。

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