「あるがまま」を受け入れる「富田酒造場」

島モノ

2016/03/10

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はしぐち たけし

入舟町にある富田酒造場外観

名瀬、入舟町の住宅街の裏手、山の一角に富田酒造場はあります。

富田酒造場がある入舟町の風景

住宅やマンションが立ち並ぶ中、この場所だけ時が止まったようです。
この市街地に酒造場があるとは想像していませんでした。

富田酒造場の裏手は山

酒造場のすぐ裏はもう山です。この写真の左側には、らんかん公園へと登っていく坂が続いています。このような光景は山と海が近い島らしいなと感じていたところ、「ウチの焼酎は、この土地の土壌じゃないとダメなんですよ」と。

富田酒造場の富田真行さん

そう教えていただいた方は富田酒造場の富田真行さん。
先代であるお父さまの恭弘さんと共に焼酎造りをされています。

黒糖焼酎はその名の通り、サトウキビから造られる黒糖を原料にした焼酎で、サトウキビを原料に焼酎造りを認められているのは日本国内では奄美群島に限られています。

富田酒造場、甕仕込みの光景

富田酒造場、甕仕込みの光景

富田酒造場は1951年11月1日、奄美がアメリカ占領下にあった時代、名瀬の蘭舘山の麓で創業し、以来大甕(540L)で昔ながらの仕込み方法で造っています。昔ながらの仕込み方法とは一次・二次ともに甕仕込みという伝統的な製法です。

全量甕仕込み、黒麹がキレと深みを生む。
つまり、手間のかかる作業がミネラル感やまろみ、後味の洗練された切れ味を生むのです。

富田酒造場の黒糖焼酎は国産米を黒麹造りし、蔵付き酵母がひそむ32個の大甕で1週間酒母造りをし、溶かした黒糖を大甕で更に二週間もろみ造り、熟成し旨味を増した「もろみ」を蒸留し39%~44%の原酒を手入れしながら貯蔵しています。

大甕は土の中に埋まっていて、甕の大きさや土などの条件が変わるだけで味が変わるそう。

 

銘柄は「龍宮」を筆頭に 「まーらん舟」 「かめ仕込」 「らんかん」 などがあります。

富田酒造場の代表銘柄「龍宮」

富田酒造場、焼酎作りに使う黒糖

「らんかん」「かめ仕込」「龍宮」の原料は雨の少ない波照間・多良間島などの黒糖で、塩のほろ苦さが出て、キリッとした味わいになり、また、「まーらん舟」の原料は雨が多い徳之島の黒糖で柔らかく上品な甘さ、トロリと上品な旨味を感じる味わいになります。

富田酒造場、飲みやすい「蔵和水 龍宮」

今回、弟さんの営む居酒屋「大虎ん」で飲ませていただいた銘柄は龍宮でも「蔵和水 龍宮」。島では水割りで飲むことが多いですが、こちらはオンザロックがおいしいです。キンキンに冷やして飲むと最高でした。飲み口はやわらかく、15度とそこまで強くないのでイタリアンや和食など様々な料理と合います。おいしくて、いつのまにやら結構な量を飲んでいました。

富田酒造場、蔵に掲げているポリシーが書かれた看板

かめ仕込みによって造られる黒糖焼酎は原料の違いだけでなく、天候、土譲、水などの環境の変化によっても味が変わるため、たくさんの量を製造することはできないのです。

それをあるがままに受け入れるのが富田さんのスタンスでありポリシー。「あるがまま」と書かれた看板が蔵に掲げられています。シンプルで強い言葉です。

さらに富田さんは原材料の黒糖も奄美の物を使うのが目標で、日々勉強しています。
「あるがまま」を受け入れ、日々の向上、変化をしているのです。

富田酒造場、焼酎作りを手伝う5代目

さらに、未来の五代目にも「あるがまま」を伝えてもらいたいと願っております。

富田さんの柔かくて温かい人柄が蔵には溢れています。

ぜひ、そんな富田酒造場の黒糖焼酎を飲んでみませんか。

《特産品の詳細は のんびり奄美にて掲載中!》

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この記事を書いたフォトライター

はしぐち たけし

はしぐち たけし

フォトグラファー/ディレクター LUCE合同会社代表。奄美にルーツを持ち、東京にて、広告、ファッション、カタログ等のスチール、ムービーの企画、ディレクション、制作、撮影を行う。また、近年ルーツである奄美にたびたび戻り、撮影活動をしている。

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