奄美で天然の塩づくり。「打田原のマシュ」に込められた思いとは…

その昔、奄美では塩づくりがさかんで、「マシュ(真塩)やどり」と呼ばれる塩焚き小屋が各戸にあり、塩を焚いては街に売りに出て生活の糧にしていたそうです。

今では「マシュやどり」もほぼ見られなくなり、手づくりの天然塩は貴重なものとなっています。

昔ながらの「マシュやどり」が今も残る集落が、奄美市笠利町の打田原(うったばる)集落。手作業で行われている塩づくりの工場があります。

ここで作られる塩は「打田原のマシュ(真塩)」と呼ばれ、精製された市販の食塩よりもミネラル豊富で旨みがありまろやか。おいしいと人気の天然塩です。塩づくり体験もできるという、その工場を訪ねてきました。

 

いざ塩づくりの工場へ

奄美大島にある笠利町の打田原ビーチの道案内の看板

この看板を目印に、左の道に入ります。

 

奄美大島笠利町打田原までの道

海沿いをドライブすること5分…

 

奄美大島の打田原ビーチ前にある塩づくり工場

打田原ビーチの目の前にある、塩づくり工場に到着です!

 

小屋に入ってみると、蒸気が充満するなか、すでに塩焚きが始まっていました。

奄美打田原ビーチ前にある工場内にある塩釜

この釜で、午前8時から約10時間作業を行い、1日に1,000リットルもの海水を毎日焚き上げているそうです。

打田原の工場で塩つくりを担当している平建泰さん

この日作業をしていたのは、打田原集落に住む平 建泰さん(19歳)。

海水はもちろん目の前の美しい打田原ビーチから汲み上げます。

砂で自然ろ過された海水を、砂の下に通したパイプで引き込み、ポンプで直接小屋まで汲み上げているとのこと。東シナ海の黒潮のミネラルがたっぷりと入っています!

奄美打田原工場の環境へのこだわり

環境への配慮から、燃料は木材にこだわり続けているそう。

 

①汲み上げた海水を釜の蒸発加減を観察しながら火にかけ、1時間おきに海水を補充する

②釜の底に溜まる不純物含有のカルシウムを除去する

③塩の結晶が増えてきたら塩の汲み上げ作業を繰り返す

④塩が冷めたらふるいにかけ、塩の出来上がり

 

この4つの作業を根気よく続けることで、ミネラルたっぷりサラサラの天然塩が出来上がります。

工場で直売もしています!

奄美打田原工場内にある販売コーナーとその商品

塩焚き後に釜に残る“にがり”は、アトピーや肌荒れに効果的だそうで「にがり風呂(入浴剤)」も人気があるようです。私も取材中、にがり成分を浴びていたせいか、帰る頃にはお肌がすべすべになっていました!

 

集落を元気に!和田さんの願いが込められた塩づくり

 

実はこの工場、奄美市の「一集落1ブランド」に認定されている事業「エメラルドブルーの海と天然の塩づくり体験」の体験場として打田原集落の方たちで運営されています。

打田原集落会事業部代表の和田昭穂さん(88歳)にお話を伺いました。

奄美打田原工場の和田さんもお肌がつやつや

和田さんもお肌がつやつやです

 

大阪で長年、教職と地域活動に勤しまれていた和田さんは、70歳の時に打田原集落にUターン。砂浜の美化作業で集まった大量の流木の処理を考えて思いついたのが、塩づくりだったそうです。手づくり天然塩の商品化をきっかけに、集落の活性化を図るため集落運営を決めたのだとか。工場は集落皆の力で作り上げ、収益も集落のスタッフに還元される仕組みです。

また、塩づくりを機にさらなる集落活性化を目指して、かつて食糧難時代だった頃の奄美で活用された食材“ナリ(ソテツの実)”の加工に取り組み、「ナリうどん」「ナリガイ(ナリ粥)」の商品化に成功。ナリは栄養価が高く、今注目の低糖質食品。現在は、塩づくり工場の隣に食堂を併設して、調理・提供をしています。

奄美の打田原工場内にある飲食ブース

これらの活動は、集落に潜在的に眠っていた女性の力を活かすことが第一の狙いだそうで、元々ご長寿の方が多い打田原ですが、皆さんイキイキとされ、本当にお元気なのだそう。

何よりもまず、88歳の和田さんのエネルギーに脱帽。そしてその原動力の源となっている、マシュとナリに絶大なるパワーを感じました。和田さんにはさらなる野望もあるそうです…!

奄美笠利町にある打田原工場の和田さんと平さん

皆さんもぜひマシュとナリ、そして和田さんのパワーを感じに、打田原に訪れてみてはいかがでしょうか。

 

天然の塩づくり体験場

住所:鹿児島県奄美市笠利町喜瀬3265-1 打田原ビーチ前

電話:笠利町打田原集落会事業部和田氏宅0997-63-2378

アクセス時間:空港から約25分、奄美市名瀬中心部から約25分

飲食店「打田原のマシュやどぅり」併設(営業は土日月の午前10時~午後3時、予約制)※2020年3月現在

塩づくり体験の時間、料金等はお問い合わせください。

HP:https://www.masyu-yaduri.net/

この記事を書いたフォトライターPHOTO WRITER

埼玉県久喜市出身。エステティシャン、医療機器営業、病院総務課での勤務を経て2017年10月、奄美大島移住と同時に龍郷町地域おこし協力隊に就任。旅行者とシマッチュの架け橋になることをめざして島のことを日々勉強中。現在、FMたつごうにてパーソナリティもしています。

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